第2話
「ほんっっっとうにごめんなさい! 全部私のせいです。私が悪いです」
神がひたすら謝罪してくる。
ちょっと……いやかなり気まずい。
てか、色々聞きたいことはあるけど、声が出せないから何も聞けない。
「あ、その点については問題ないです……。私と限定で念話できるので」
まじで?
なら結構楽だな。
「はい、なんでも聞いてください」
なら、まずなんで俺は触手に転生したんだ?
エルフと触手って似ても似つかないと思うけど。
「えっと……村瀬さんが転生する予定だった集落の下に大っきいダンジョンがあるんですよ。で、座標間違えて触手に魂を飛ばしてしまったんですよね」
ミスが人間のやるうっかりミスなんだよな。
疲れてんの?
「むしろ善人が少なすぎて暇です。もうちょっと人間のレベル上げてくださいよ」
俺に言われても……。
まあいいや。
2つ目の質問。
今俺は目が見えないけど、いつか見えるようになったりする?
「いつかと言わず、今すぐにでも可能ですよ」
まじで!?
「魔力探知のスキルを取得するんです」
スキルか。
異世界っぽくなってきたな。
けど、魔力探知とかどうやって取得すれば――
《スキルポイントを10消費して、スキル『魔力探知』を取得しますか?》
うわ、何だ今の声。
頭の中に直接響いてきた。
いや、神も似たような話し方してきたけど、あっちは人の声じゃん?
こっちは完全に機械音声なんだよ。
凄いびっくりした。
「今の声は天の声的な感じだと思っていただければいいですよ。そして、今の村瀬さんはスキルポイント10持っているので魔力探知を取得できます」
おお。
いや、神の声がもう天使の声じゃない?
どうでもいい?
そうですか。
けど、魔力探知を取れば目が見えるようになるんだよな。
じゃ、魔力探知取得します。
《スキルポイントの消費を確認。スキル『魔力探知』を取得しました》
で、どうすれば?
「ノリと勢いです」
そんな適当な。
……えーっと、それじゃあ……。
魔力探知、ON!
ブワァ!
うわすっげ!
まじで見える!
けど、三人称視点なんだけど。
「擬似的に視界を生み出すものですからね。本来なら通常の視界にプラスして後ろが見える魔力探知を発動させる感じで使いますから」
なるほどなー。
けど、視界があるだけありがたいか。
あと、マジで俺触手なんだな。
「ええ、今まで信じてなかったんですか?」
そんな簡単に信じたくないからな。
てか、念話って俺の考えてることどこまでわかんの?
その感じだと、俺が信じたくなかったってことわかってなかったっぽいし。
「ほんとに表面しかわかんないんですよね。今脳がメインで考えてること……例えば、こう話したい。って思ってること位しかわかんいないです」
なるほどね。
ギリギリプライバシーは守られてる訳だ。
「意図的にそう設定してますからね、これ。その気になれば、あなたの考えてること全部知ることも可能ですけど」
それはやめてくれ。
「流石にやりませんよ」
そういえば、いつの間にか俺の敬語外れてたけど、殺されたりなんかは……。
「しないです。そこまで神も野蛮じゃないです」
ですよねー。
「むしろ、フランクに話してくれた方がこちらとしては助かります。友達みたいで」
ふーん。
……あれ?
もしかして、神って友達いない?
「うるさいですね! なにか文句ありますか!? 殺しますよ!?」
いやめっちゃ野蛮じゃん!
ごめんって、悪かったよ!
「反省したのならいいです。……あ、そうだ! 村瀬さんが友達になって下さいよ」
ええ……。
それでいいの?
「いいんです!」
いいんだ……。
じゃ、友達になったんだから神の名前も教えてよ。
神って呼びにくいから。
「シズクです」
OK、シズクさんね。
「じゃあこれからよろしくお願いしますね! 村瀬くん!」
もうくん呼びになってる……。
「村瀬くんもシズクちゃんって――」
それはやだ。
「えー」
えーじゃない。
……あれ?
神っていつまで俺と話すの?
仕事があったりとかするんじゃないの?
「村瀬くんが死ぬまでですけど」
え、一生いるってこと?
「はい」
なんで?
「暇なので」
仕事は?
「ないです。善人がほとんどいないので」
なるほど。
つまり、俺は一生をこのドジっ子の神と過ごすってことか。
「ドジっ子じゃないです」
結構きつくないか?
プライバシーとか。
「その辺は配慮しますよ。それに、この世界のことまだ何も知らないですよね? 知り尽くしている私なら、手助けできると思いますけど」
確かに、それは頼もしい。
よし、ならこれからよろしくな!
「はい」
じゃあ早速。
「どうしました?」
お腹すいた。
「自分でどうにかしてください」
転生先触手はちょっと…… 鯖の味噌煮缶 @3bakann
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