第26話 やるしかない!

「エクスカベーターとは発掘者です」


「はい」


「以前にも説明した通り、ここは元々ない場所なんです。ですので、私が好きに使っていたんです。はじめはペルセポネの介入も気にはしていなかったんですけどね。まあ、コウタロウさんが一人泣いてるのはいつものことですから」


「はあ」


「そこに裏献金の話が出てきました」


「そうか、僕はただの間抜けな運び屋だったけど、クルミさんには裏献金も合併も繋がった事件だったんだ」


「ええ。少しだけ、身の上話をすると、私は会長の孫娘です」


「ええ?! あ、ああ! だから招待状を手に入れられたんだ」


「はい」


「領主の裏献金の画像は?」


「ああ、あれは銀の玉、ツワブキさんの魔導具ですが、画像の録画、録音はもちろん、認識阻害効果のある希少魔石を併用することで実現できるんです」


「は? え? 認識阻害効果? それってやばいんじゃ?」


「ええ、ですので領主レベルではなく、帝国軍本部が動いてくれました」


 だめだ、ついていけない。


「まあ、使用時間などの課題もありますからすぐに軍事転用などには繋がらないんですけれど」


「はあ、そうなんですね」


「ええ、そういうことに


 しています??

 ああ、まあ、そこは、ね。


「それで新事務所ってどういうことなんですか?」


「ここはペルセポネとも話がついたので、きちんとした発掘事務所に戻ります」


「え、じゃあ僕たちは、エクスカベーターの方をやっていくってことですか?」


「うふふ。良い言い方ですね。そうです。エクスカベーターは私直轄、というより新会社ですね」


「え、そうなんですか?」


「はい。で、そこの所長にアダン君。と、いうことです」


「あの、その、大変申し上げにくいんですが、設立資金はモルペス販売から?」


「あ、はい。出ませんね。モルペス販売の業務とはまったく関係ありませんから」


「いやあの、大変申し上げにくいのですが、私にはそんな財力はありません」



「アーダンちゃん!」


「うわっ。なんですか、ギンゾウさん! いつの間に!」


「あるでしょ、資金なら」


 ニヤリと笑うギンゾウさん。


「え? ないですよ? あ! 宿屋の裏献金!」


「はい、そして私からの出資、金貨一枚を足します。これで金貨二百枚です。さあ、アダン君、どうします?」


 これは決めないとなのか。




 僕はこの事件が起こるまで自分はエリートだと思ってた。

 だけど、今回のことで思い知らされた。


 僕はただの間抜けな使い捨てられるだけの駒だった。


 クルミさん、ギンゾウさん、ツワブキさん、コウタロウさんに出会っていなかったらと思うとゾッとする。


 この人たちとならこの街で、この国で、僕と同じような目にあう人を救えるかもしれない。


 それを僕自身が担えるのなら、やってみたい。



 いや、やるしかない!

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