第25話 エクスカベーター

「いったいどういうことなんですか?!」


「なにがよ?」


「何がいつからどうなってこうなったんですか?!」


「いやあ、よくぞ聞いて下さった。実はあれはね、全部オレが考えてやったことなんだよお」


「ウソだ、絶対にウソだ。ギンゾウさんがあんなこと考えられるはずない。クルミさん! 教えてくださいよ!」


「舞台で言ったとおりですよ、あなたもエクスカベーターの一員になったっていうことです」


「わかりません! なんなんですか、みんなして! 僕のしでかしたことを利用して、僕をいいように使って! 僕の、僕はどうなっちゃうんですか?!」


「アダンちゃん」


「なんですか! みんなで寄ってたかって僕の人生で遊んでるだけじゃないですか!」


「アダン君。決してそんなことはないのですけど」


「アダンちゃん、よーく考えてごらん。ほら、周りを見てみろよ。クルミちゃん、ツワブキさん、コウタロウちゃん、で、オレ」


「ええ! そうですよ! みんなして僕のことを」

「うん、みんなして領主やペルセポネの罪をエクスカベートしたじゃん」

「それはまあそうかも知れませんけど」


「で、アダンちゃん。お前、何したの?」

「え?」


「何もしてないの、お前だけじゃん?」

「あ……」



 そうだ。

 みんな役割を持ってた。


 全体の計画を立てたクルミさん。

 なんだかんだ言いながら物事を動かしたギンゾウさん。

 あの機械の設計から製作を行ったツワブキさん。

 走り回って、スポットライトを当て、泣いてたコウタロウさん。



 僕は。

 僕は何もしていない。

 僕だけが何もできなかった。



「と、言うことでアダン君」

「は、はい!」


「アダン君にはここモルペス販売を離れ新事務所の所長に就任してもらいます」


「え? それはいったいどういう」


「「所長就任、おめでとう」」


「あの? は? 所長?」


 どうしてこうなるんだ?

 これもきっと仕組まれてるに違いないんだけど。


 でも、なんだか、数日の付き合いでしかないこの人たちに魅力を感じている自分がいる。


「クルミさんはどうなるんです?」


「ああ、私はここにいますよ」


「じゃあ所長のままでいいんじゃ?」


「残念ながら」


 クルミさんは事務所の窓から外を見ながら遠い目をしている。


「アダンちゃん、クルミちゃんはね、もっと上」


「え? 上? 所長じゃなくて? え?」


「はい、お断りしたんですが。社長を仰せつかってしまいました」


「えっとそれは、発掘ですか? エクスカベートですか?」



「ん? 一緒じゃん、それ。なに、言い方変えるの?」

「だってわかりにくいじゃないですか魔石の発掘なのか事件の発掘なのか」


「お、初めて仕事したね、アダンちゃん」

「で、そろそろ教えてもらえませんか? エクスカベーターってなんなんですか? クルミさんは何者なんです?」


「説明しよう!」


「あなたじゃないです。クルミさんにお願いします」


「なんでい! アダンちゃんのバカぁ!」


 どっかに走っていったな、ギンゾウさん。


 ほっとこ。


「お願いします、クルミさん」


 クルミさんは、僕をじっと見つめ、ホッと息を吐くと諦めたように話し始めた。

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