第24話 領主倒れる
その時、観客の中にスポットライトが当たり、一人の女性が舞台に上がって来る。
薄い青いドレス、青い仮面をつけ、青みがかった銀髪のクルミさんだ。
クルミさんはゆっくりと舞台に上がり、手袋を外す。
会場は突然現れた女性にくぎ付けになり、静まり返っている。
「領主様、この度の余興、いかがでございましたでしょうか?」
「ん? なんだとっ! 貴様かっ?! 貴様がしくんだのか?! これはいったいどういうつもりなのだ!」
「どういう? 私どもエクスカベーターはこのような発掘を生業といたしております」
「ん? エクスカベーター? 発掘屋? ふんっ! 一体どういうことかと聞いておるのだ!」
「はい、ではご説明申し上げますね。ただ、その前に」
スポットライトの中のクルミさんが指を一つ鳴らすと静寂に包まれた会場に響き渡る。
会場外から兵士数名がが怒涛の如く舞台に押し寄せ一気に領主を拘束する。
「何をする! わしはこの領の領主であるぞ! おい、よせ! 触るな! ええい、なにをしておる! 離せ!」
「さて、これでひとまず安心ですね。それでは改めて。会場の皆様もいったい何が起こっているのか不安でしょうから。ご説明申し上げますね」
そういうと、会場の観客たちに向かい話始める。
「事の起こりは三年前になります。魔石発掘業者モルぺス販売の社長が交代しました。前社長は在らぬ罪を着せられ辞任、新社長アラクサは業界最大手、ペルセポネ販売との合併をもくろみました。そして、その合併工作において領主への裏献金が行われました」
わなわなと怒りを浮かべる拘束された領主。
「ええい、何を証拠にそのようなことを! 一体誰の差し金だ!」
「あら、おかしなことを。誰かがこの件を突いてくるとお考えでしたの?」
「も、妄言を!」
「まあいいでしょう。証拠、とおっしゃいましたね。先ほどの映像についてはどうお考えですか?」
「あんなものは捏造だ! あんなものはどうとでも細工できようが!」
「そう仰るだろうと思いましたよ、領主さま。この銀の玉、なんだと思いますか? これね、映像記録媒体なんですよ、まあそれだけではないんですけれど」
クルミさんは玉を領主に向けてスイッチを押す。
すると領主に向けて黄色い光が降り注ぎ、光が収まると領主は気絶していた。
「クルミ殿、そろそろよろしいかな?」
舞台下から兵士が声をかけてきた。
「あ、はい。ありがとうございます。それでは最後に」
その言葉と同時にギンゾウさんにスポットライトが当たる。
「さて、皆様。私たちは領主とペルセポネの裏献金事件を発掘しました。私たちはエクスカベーター、発掘者です。闇の中に埋まった事件を発掘し、陽の光を当てる。それが私たち、エクスカベーターなのです。それではいずれまた、どこかで」
言い終えると同時にクラッカーが鳴り響き、紙吹雪やテープが会場中に舞う。
その間に僕たちは舞台から降り、喧騒の中、クルミさんに手を引かれながら会場を後にした。
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