第23話 表舞台

「いったい何事だ! こんな余興は聞いておらんぞ! いったいどうなっておるのだ!」


 怒りの形相だ。

 そりゃ怒るよね。


 ギンゾウさんはニヤリと笑う。

 あれは絶対悪巧みしてる顔だ。


「おい! 貴様! 何者だ! 衛兵、こ奴らを捕らえろ!! 衛兵! 何をしておる!」


 しかしなぜか衛兵たちは現れない。

 領主一人が舞台に上がっている状態だ。


「まあまあ、領主様。御覧なさい、観客に皆様のお顔を! 皆様、真実を知りたいのですよ! このまま、という訳にはまいりますまい! みんなものすごーく期待しておりますよ!!」


「さて、この一連の映像は一体どんなつながりがあるのか。さあ、この舞台の主役に登壇願いましょう!」


 え? え? ええ?!


 クルミさんは小さな声で僕に、さあアダン君。行ってきてください、仕上げです、と僕に仮面を渡しながらつぶやいた。



 って、なんで僕にスポットライトが当たってるの?


 クルミさんはこうなることが分かっていたってことだよね?


 僕は仕方なく舞台に向かう。


「さあてお立合い! 皆様、こちらの青年は先ほど画像に出て来た宿屋でお金を盗まれた青年です。皆様、お話聞いてみたいですよねえ。一体あの場で何が起こったのか! さあ、青年!! ここへきてぶちまけるんです!」


「えっと、あの……」


「はあはあなるほど!」


「え? いや、あの……」


「おお! なんということだ! 本当ですか?!」


「いや、僕は何も……」


「そうなんですか!! 承知しました!!」


 僕の話など何も聞かず、観客に向けて大声で叫ぶギンゾウさん。


「何ということでしょう! 我々は大変な事実を知ってしまいました! 実は先ほどお見せいたしました映像は、すべて今日のパーティの主催者であらせられる、領主様と繋がっておりました! さらにこちらをご覧ください!」


 そう言うと、ツワブキさんが新しい銀の玉をセットする。


 すると、スクリーンに領主とモルぺス販売アラクサ社長が映し出され裏献金のやり取りが映し出される。


 ガ…… ガガ…… ガガ……

「……れで、よろしかった……、領主さま」

「うむ、しか……もなかなかうまい手を……がえたな」

「今後、モルぺ……ルセポネの合併が……つきには、ぜひ……」


 音声まで入ってる。


「さて、ご覧いただきました映像は全て真実!」


 いや、すべてじゃないよね?


「なんと! モルぺス販売アラクサ社長はペルセポネ加工との合併を進めております。その後の地位を盤石にするため、ご領主に裏献金を行っていたという事なのです! さあ、領主様! 何か言いたいことは?!」


「ぐぬぬ、知らん! 知らんぞ! わしは何も知らん! それは捏造だ! 皆こんな余興の戯言を信じてはならぬ!」


 領主が弁明をし、観客たちがざわつき始める。


 これいったいどうやって収拾つけるんだろう?

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