第20話 行くぞ領主館!

 店の奥をのぞくとそこにはクルミさんが立っていた。


 え? あれ?

 そっちには出入口ないけど?

 

 どうやって出てきたの?


 またこの人たちの秘密?


 クルミさんは僕に気づくと笑顔を浮かべながらこちらに駆け寄ってきた。

 そして僕の手を握りしめてきた。


 僕の心臓は激しく鼓動している。

 きっと顔も真っ赤になっているはずだ。


「良かった」


「あ、ありがとうございます。無事に」


「ええ、無事に手に入れられたのですね、金貨」


 え? 金貨?


 一瞬、心配してくれたのかと思った自分が恥ずかしい。


「ああ、はい。無事手に入りました」


「それはよかったです。では、向かいましょうか?」


「えっと、どちらに? っていうかクルミさん、どっから来たんです? で、この後どうするのか教えてはもらえないんですか?」


「申し訳ありません。まだ教えられません。しかし、あなたなら大丈夫ですよ、アダン君」


「は、はぁ」


「ふむ。では行きますよ」


 クルミさんはそう言うと僕とギンゾウさんに、今度は従者のような服に着替えるよう伝えられた。


 そしてなぜかクルミさん自身も着替えるようで奥の部屋に再び入っていった。




 僕たちが着替え終わって数分後。


 奥から現れたクルミさんはどこの貴族なのかというほど美しく、清楚で可憐で、この人は一体何者なんだろう。

 他の人のことはいろいろ教えてくれたけど、クルミさん本人のことは何も教えてもらってないよな、そう言えば。



 「なにをぼーっとしているんです? アダンさん、ギンゾウ。行きますよ」


 そして雑貨屋を出るとなぜかそこには馬車が待機して僕たちを迎え入れる。


 やっぱり訳が分からない。


「ほんっとうにわかりません! ギンゾウさんのニコニコ笑顔が本当に腹が立つ! 笑顔で語ろうとしないでください! なんなんですか!」


 馬車の中で叫んでしまった。


「なんなんですか? と聞かれたら、答えてあげよう、このギンゾウ様が! アダンちゃん、今から行くのは領主様のお屋敷だよ。領主の屋敷では今、領内の貴族や商人を集めたパーティが行われてるんだよ。そこに俺たちが乗り込もうっていう算段なのさ。ね、クルミちゃん」


「ええ。そうですね」


「え? 領主のパーティ? でも、どうやって? 入るためには招待状が必要でしょ? 招待状なんてどうやって手に入れるんです?」


「持ってるんだよ、クルミちゃんは。実はクルミちゃん、そんじょそこらの娘さんとは」


「ギンゾウ」


「あ、はーい。ま、アダンちゃんも楽しむといいよ、パーティ」


「楽しめませんよ。どうしたらいいんですか?!」


「どうもこうもありません。アダン君とギンゾウは私の従者ですから、後ろに控えていればいいだけです」


「は、はあ」


 いったいどうなってるの?

 クルミさんはいったい何者なんだろう?


 招待状が手に入るっていったい。

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