第18話 うさぎのぬいぐるみ

「親父を騙くらかして? え、でもじゃあ本物の実行犯は? 鉢合わせしちゃうんじゃ?」


「あー、そうだね。ま、それも宿の親父に言ってあるからさ。まあもうすぐここにやってくるだろうねえ」


「ここに?!」


「うん。頼むね、アダンちゃん。あ、そうだ、はいこれ」


 頼むね?

 なにこれ?


 手渡されたのはウサギのぬいぐるみ。


「なんなんですか、これ!」


「これはね、アダンちゃんが見つけた魔石をセットした魔導具」


「いや、ぬいぐるみじゃないですか! これで一体どうすれば?」


「中をよく見てごらんよお」


 ウサギのお腹を確認すると丸いこぶし大、ツワブキさんが作ったと思われる魔導具が埋め込まれていた。


 あ、これ、昨日クルミさんと話してたときの。


「さあ? あ、来たみたいだよ、奴ら」


 ドアがノックされる。


 いや、待って。

 ちょっと!


 なんでこっち見てウインクしてんの、ギンゾウさん!


 そしてドアがギンゾウさんによって開かれる。


 あ、こいつ!

 僕たちの魔石を奪っていったやつ!


 そう思った瞬間、僕は目をつむり、魔導具を強く握りしめていた。





「もういいよ、アダンちゃん」


 ゆっくりと目を開くと、床に倒れた男をニコニコして縛り上げているギンゾウさんがいた。


「え? これは?」


「知らないよお。クルミちゃんが宿についたらアダンちゃんにこれ渡せって言われただけだもん」


「は、はあ」


「ま、とりあえず問題は解決したな。んじゃ、オレは金もらってくるね」


 そう言ってギンゾウさんはターゲットの泊まっている部屋に向かった。


 何がどうなっているのかさっぱりわからない。


 とりあえず床に倒れている縛り上げられた男をベッドに横にして布団を被せておく。



 僕の手には銀色の魔導具の入ったうさぎのぬいぐるみ。


 その球の中で青い魔石が光っている。


「なんなんだろ?」


 椅子に座り、クルミさんとこの球を見ていたときのことを思い出す。


 あの時、クルミさんはこの球を見ながらなんて言ってたっけ。


 「アダン君、この魔石はあなたが見つけるべくして見つけた魔石です。この魔石が、そしてこの魔導具があなたを守ってくれますよ」


 とかなんとか言ってたような気がする。


 それどころじゃなかったのでほとんどうわの空でよく覚えてないけど、お守り的な話だと思ってた。


 まさか物理的に身を守ってくれる魔導具だったなんて思いもしなかった。


 椅子に座り、そんなことを考えているとギンゾウさんが満面の笑みで戻ってきた。


「さて、用事もすんだしおいとましましょうか、アダンちゃん」


 宿を出るとき、親父に金貨一枚渡し、連れは疲れてるんでゆっくり寝かしといてやってくれ、と伝えてるあたり、ギンゾウさんて本当に悪い人なんだなと思った。

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