第17話 なぜ宿屋に?

 なんで?


 その日の夜、僕はギンゾウさんに連れられて僕が金を盗まれた宿屋へ来ている。


 黒いフードを被ってるから宿屋の親父には僕だと分からなかったみたいだけど、なんだかギンゾウさんが親父と楽しそうに話し、その後部屋に入る。


「ギンゾウさん! なんでこんなとこに来なきゃいけないんですか?!」


「ん? なんで?」


「あー! また聞いてしまった。なんで聞いちゃうんだろ、この人に聞いてもまともに答えなんて返ってこないのわかってるのに」


「そうしょげるなよ。しょげしょげ君かよ。ま、それはさておきだな、奴らね、アダンちゃんの時と全く同じ手を使うみたいだからさ」


「え? しょげしょげ君てなに? 違う。なんで? なんでここに僕たちが、って、ああ! 先回りして止めるんですね!」


「アダンちゃん、そんなことして物事が悪い方へ進むと思う?」


「え? だって、じゃあなんで?」


「またなんで? って聞いてくるなあ。ほんとにいい人だね、アダンちゃんは」


「だって全くわからないですもん」


「奴らが来る前にオレたちがその金いただくんだよ」


「は? え? どういうことです?!」


「アダンちゃんは思うように動いていいからね。やりたいようにやればいいから」


 待って、ギンゾウさん、意味がわからないよ、奴らの悪事を暴くんじゃないの?


 なんで僕たちがその金いただく話になってんの?


「アダンちゃん、ここ、この宿ね」


「え、はい」


「宿ごとペルセポネの支配下なのよ。この宿に泊まった時点でもう罠にかかってるの」


「そうなんですか?」


「そーなんです。だからね、今日金を持ってきた人もアダンちゃんと同じ運命なのよ。かわいそうにね、間抜け社員とか言われちゃって」


「そんな悲しそうな目で見ないでくださいよ、ギンゾウさんにそんな目で見られたら余計に悲しくなります」


「ま、そういうわけだからさ。オレたちでいただくよ、金」


「え? いや、どういうわけです? どうやって?」


「さっき宿屋の親父と話たろ?」


「ええ、あんまり楽しそうに話してるんでこっちは見つかるんじゃないかとヒヤヒヤでしたけどね」


「大丈夫、大丈夫。向こうはアダンちゃんの顔なんて覚えてないよ。ただの金を運んでる間抜けなんて誰も覚えてないって」


「本当に腹が立って来ました」


「まあそう褒めるな」


「くっ。まあいいです。で? その親父が?」


「その親父にさ、ちょっとカマかけたんだよね。そしたら今日は特別な金が入る日だって喜んでたわ。あれだね、盗ませるとこづかいもらえるシステムなんだろうねえ。ひでえことしやがるねえ」


「いやでも」


「言ったろ、アダンちゃんの時と同じやり方だって」


「ええ、はい。そうすね、はい」


「だからさ。なんでオレまで黒いフード被ってると思ってんの。盗みの実行犯はオレたちなんだよ、親父の中ではさ」


 なんだとおおおお!

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