第16話 役割なし
あの後、クルミさんはそれぞれに役割を振った。
作戦実行までの一日、僕にはなにも役割がなかったんですけど。
コウタロウさんはまたしても人生で一番急げと言われ、ギルドから来た書簡を持ってどこかに走り去った。
ツワブキさんはなんだか知らないけど音楽の話ばっかりしながら地下室で何かの機械をいじり倒している。
ギンゾウさんは、わからない。時々事務所に来ては僕をバカにしたようなことを言って去っていく。
クルミさんは、事務所でいつも本を読んでいて、時々ツワブキさんに呼ばれて地下に行っては疲れて帰ってくる。
「クルミさん」
「なんですか? アダン君」
「あの、何がどうなっているのか教えてもらえませんか?」
「今、アダン君にやる事はありません」
「だって、みんななんだか忙しそうに動いてるじゃないですか」
「ええ、それぞれに役割がありますから。その時が来たら動いてもらいますから」
え?
それだけ?
さすがに僕にも何か手伝わせてくれても良さそうなものなのに。
クルミさん、机でまた本を読み始めたよ。
「僕だけ何もしないって、役立たずみたいじゃないですか」
少し辛くなって独り言。
「そんな事はありませんよ。あなたには大切な役割がありますから、心配しないでください、時が来たらちゃんと動いてもらいますから」
聞こえてたのかよ。
「あ、そうだ。アダンさん」
「は、はい!」
「発掘、してきてもらえます?」
「え?」
「発掘です。リャンブア公園で」
「それが僕の役割ですか?」
「ええ、私たちは
「わかりました。で、もしペルセポネのやつらが来たら?」
「今まで通り、渡してかまいませんよ」
「ええ? そうなんですか?」
「はい。じゃ、お願いしますね。あ、こないだと同じようにもし小さな魔石が見つかったらポッケに入れて持ち帰ってくださいね」
「は、はい! それが僕の役割なら、一生懸命任務を遂行します!」
「ええ、よろしくお願いしますね」
クルミさんがニッコリと笑顔で送り出してくれた!
頑張るぞ!
やっと役割をもらったんだ。
そう思ってたんですけどね。
発掘作業をしていると、奴らがやっぱり現れました。
そして、僕が魔石を発掘できていないのを見て罵声を浴びせ、去っていきました。
日が落ちて、なんとも悔しい思いを胸に事務所に戻りました。
本日の収穫は無しです。
そうクルミさんに報告すると、そうですか、と冷たくひとこと言われました。
今日はもう帰って寝ようと思います。
明日はどうなるんだろう。
結局作戦を教えてもらってないんですよ、僕。
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