第15話 みんな知っている

「どういうことですか? ギンゾウさん」


「んーとね、こないだ、ペルセポネの通信電波を傍受してたらさ、なんか変な会話が聞こえてきたのよね。それがさ、その会話の中にアダンちゃんの名前が出てきたわけ」


「え? 僕の?」


「うん。金貨盗まれた間抜けな社員がどうとかこうとかさ」


「え? なんで? なんでペルセポネのやつらが?」


「んー、それはわからないけど、でもとにかく気になる会話が出てきてるわけ。だからとりあえずクルミちゃんに報告したの。そしたらその通信傍受続けてって言われたわけね」


「そんな、僕? どうしてペルセポネが僕の名前を?」


「うん。おそらくね、アダン君のお金を一回ペルセポネに流したんだと思う」


「って事は領主にはモルぺス販売からではなく、ペルセポネからの金って事になって渡されたって事ですか?」


「そうね。そうなる」


「え? それじゃあ、これって、領主とペルセポネの癒着じゃないですか!」


「そうだね」


「それってアラクサ社長もその事に関わってるんですか?!」


「というかむしろ主犯ね。合併時に自分の立場を強化するために今回の裏献金を仕組んだって考えるのが自然ですよね」


「そんな?!」


「どうするアダン君。計画に乗る? 乗らない?」


 なんなんだ。

 なんなんだこれ。

 僕はとんだ道化者じゃないか。

 全部仕組まれてたってことなのか。

 なんだか無性に腹が立ってきた。


「僕にできることならなんでもやります。だから教えてください、どうすればいいのか」


「では、お話ししましょう」


 そう言うクルミさんの表情はとても厳しいものだった。




「ところで僕がクルミさんに話を聞いている間になにやってんすか、ギンゾウさん」


「ん? ああ、これ? これはね、さっきペルセポネの通信を傍受してて聞こえてきた、次の裏献金工作の予定」


「え? なんでそんなもんがわかるんですか?!」


「あはは、大丈夫だよお。傍受されてるなんて思ってないから。それにしても、よくこんなに簡単に罠にかかるよねえ」


「うふふ、ほんとですねえ」


「うふふ、じゃありませんよ! いったい何をしてんですか。クルミさん、これはどうなってるんですか?」


「アダン君。次の裏献金工作で一発逆転狙うわよ」


「え? それはどういう」


「いい、私たちにはこれまで貯めた希少魔石とツワブキさんの魔導機械、ついでにギンゾウの話術があるの」


「は、はい?」


「これを使って領主、ペルセポネ、そしてモルぺス販売のアラクサ社長に一泡吹かせてやるの。ギンゾウ、次の裏献金工作はいつ?」


「明後日の夜。アダンちゃんに使ったのとほぼ同じ計画でやるみたいだよ」


「わかったわ。じゃあみんな、それまでに準備を進めなきゃね!」


「「「おおー!!」」」


 いや、おおー!! じゃねえよ、僕はなにすんだよ!

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