第13話 なぜ知っている?

「少し、頭を冷やしてもいいですか? そして僕にはまだクルミさんの話と僕の紛失の話が全くつながらないんですけど」


「はい、そうですね。では、アダンさんはお茶でも飲んでいてください。先にこちらを済ませますので」


 機械に繋がれた複雑な模様が描かれた銀色の球は僕が持ってきた魔石を内包し、ゆっくりと青い光を放っている。


「あの、クルミさん。それ、なんなんですか?」


「うーん、先に説明してもたぶんわからないかもしれませんが。わかりやすく言うと、これは希少魔石の性能を鑑定する機械ですね」


「え? 鑑定機? そんなことできるんですか?!」


「はい。原理はツワブキ博士にでも聞いてください。私から説明すると誤解があってはいけませんので。で、先ほどコウタロウさんを走らせたのはペルセポネよりも先にこの魔石の有用性をギルドに報告するためです」


「えっと、まだ鑑定済んでなかったですよね?」


「ああ、私。鑑定できちゃうんです」


「は?」


「説明がとても難しいのですが、私、魔石と会話ができるんですよ」


 何を言ってるんだこの人は?

 魔石と話せる?

 ダメだ、完全に理解の範疇を越えている。


「すみません。クルミさんが何を言っているのか僕には理解できません」


「ええ、大丈夫です。理解してもらおうとは思っていませんから。さて、話を続けます」


「いいんですか? それって結構大事なことじゃないんですか?」


「理解できない人に話しても仕方ないでしょう。今は置いておいてください。さて、落ち着いたようですので、アダンさんの裏金紛失事件の事を話しましょう」


「え? ああ、はい」


「モルぺス販売が領主に裏献金を行った、バレなければ何も問題はありません。ただ、今は水面下でペルセポネとの合併をもくろんでいる最中、少しでもリスクを回避したい。そこで、入社三年目のエリートだと思い込んでる社員をお使いに出す。その間抜けが宿に泊まってる間に金貨を盗まれてしまう。もちろんその社員はそのことを警察騎士隊に申し出るわけにはいかない、だって裏献金ですもんね」


「え? え?」


「社員は盗まれたことを社長に報告。社長は激怒。社内的にその社員を島流しに。で、お金は盗まれたことになってますが、きちんと領主に届いている」


「そんな、そんなわけないじゃないですか! だって、だって僕はこれまで会社に尽くして、え? どういう事? そんな、そんなバカなこと」


「アダンちゃん。信じたくない気持ちはわかるけど、クルミちゃんが言ったことは真実だからね」


「ギンゾウさん。いつから聞いてたんですかっ!!」


「んー、わりと初期から」


「なんなんですかっ?! いったいなんなんですか、ここは!」

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