第12話 銀の玉の魔導具

 複雑な模様が描かれた銀色の球をじっと見つめながら、クルミさんが尋ねて来た。


「アダンさん。ここで少し他のメンバーについてお話します」


「あ、え? はい」


「ギンゾウ」


「はーい、なに? クルミちゃん」


「あなた、ちょっと通信機使ってペルセポネの情報仕入れてきてくれる?」


「りょうかーい! どこまで? どこまでやっていいの?」


「んー、そうだなあ。悪い方へ、くらいかなあ」


「うっひょー! じゃ行ってくる」


「えっと、クルミさん?」


「はい、今のギンゾウね、本人も言ってましたけど、物事を悪い方へ悪い方へ持って行く天才」


「え?」


「元詐欺師。口だけで世の中のいろいろなことを動かすの」


「詐欺師?! えっと、あの」


「で、髭クルンおじさん、ツワブキさんね。今日ももうすぐ来ると思うけど、彼は科学者。魔導機械研究の第一人者だったんだけどね、学会の裏切りにあって今はここに」


「え? じゃあ、この機械は?」


「ええ、ツワブキさんが設計から製作まで行ったわ」


「え、え? ちょっと理解がおいつか――」


「そしてコウタロウ。彼は鉱石のエキスパート。むしろ鉱石のこと以外は何の役にも立たないわね」


「は、はあ」


「で、アダンくん。あなた」


「え、あ、はい」


「あなたはアラクサ社長に命じられて裏金を領主に渡すために宿に泊まった」


「は、はい」


「そして指定された宿に泊まって朝起きたらお金がなくなっていた」


「そう、です」


「で、その責任を取らされてここに転属させられた」


「は、い」


「あなたは完全に捨て駒だったんです」


「え? それはどういう?」


「冷静に考えてみましょう。領主への裏金、これはまあある話なんでしょう。だけど、最近帝国ではこの手の告発などが相次いでいて、企業側も領民に知られるとかなりまずいですよね。そして、モルぺス販売アラクサ社長は昔から出世欲の強い方で、次回の役員会でナワシロ会長にとって代わろうとしています。さらに」


「ちょちょ、ちょっと待ってくださいクルミさん。僕が金を失くしたことと今の話に何の関係があるんです? それにその情報どっから?」


「もう少し聞いていただけますか」


「あ、はい。申し訳ありません」


「はい。そして現在、モルぺス販売とペルセポネ加工は水面下で合併の話が進んでいます。ここで注目するのはペルセポネ販売は領主の資本が入っている、という点です」


「え? そうなんですか?」


「ええ、そうなんです。そして、発掘現場の公園からは希少魔石が少量ですが算出され、そのことは公にされていません」


 待ってくれ、もう訳が分からない。

 それが僕が金を失くしたこととどうつながるんだ?

 いや、それどころではない。


 ていうかこれ、ものすごい話になってきたんじゃないか?

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