第11話 裏献金
そもそも本当に何なんだ、この人は。
この事務所の人たちといい、さっきのガラの悪い連中と言い、何者なんだ。
「あの、クルミさん」
「ええ、起動までに少し時間がかかるから、それまで説明しますね」
「あ、はい。ぜひお願いします」
「襲ってきたガラの悪い人たちは、ペルセポネの人たちです」
「え? ペルセポネって、あの?」
「ええ、魔石の加工を扱っているペルセポネ加工カンパニーですね」
「なんでペルセポネが?!」
「昨日説明したように我々モルぺス販売発掘事務所は存在しません。業界最弱です。モルぺス販売のナワシロ会長の税金対策のために存在している会社ですから」
「え、ええ。でもなんで?!」
「この土地に問題があるんです。この発掘現場、ペルセポネに権利があって」
「わかりません」
「ええ、元々ここはモルぺスの土地、騙されたナワシロ会長がペルセポネに奪われ借地している状態になっています。まあ会長からしたら微々たる土地と権利ですからあまり重要視していなかったんです。そうこうしているうちに、彼らの嫌がらせが始まりました」
「え? じゃあコウタロウさんが掘っても?」
「ええ、出た物のほとんどをペルセポネに持って行かれます」
「そんな! じゃあコウタロウさんはなんのために?!」
「私も初めは止めたんですが。まあそれはおいおい説明します。モルペスとペルセポネの関係についてはよろしいですか?」
「あ、はい」
「さて、ここでアダンさん、あなたが登場します」
「え? なんで僕?」
「あなたは本社エリートコースを走っていた、そうですよね?」
「ええ、まあそう自負しています」
「そうですか。社長から直々に裏金を領主に届けるように言われるくらいには、ですか?」
「なっ?! なんでそれを?」
「アダンちゃん、クルミちゃんはなんでもお見通しなんだから。ダメだよ、そういうこと黙ってちゃあさ」
「ギンゾウさん、なんで聞いてるんですか?!」
「え? ずっといたじゃん、オレ。で、なに? アダンちゃん、それなんがどうなっちゃってこうなったの? 聞かせて!! クルミちゃん!」
「なんでクルミさんに聞くんですか?!」
「だってアダンちゃん、教えてくれそうにないからさあ。せっかく楽しそうな話なのに。教えてくれんの?」
「いやですよ! なんなんですかいったい! それが何の関係があるって言うんです?!」
「アダンさん。あなたに裏金を運ばせたのは社長のアラクサで間違いありませんか?」
「え? ああ、はい、そうです。社長に直接頼まれました」
「そうですか、わかりました。あ、そろそろ起動するようですね。お話はこの起動が終わった後にまた」
クルミさんはそう言うと僕たちにかまわず、複雑な模様が描かれた銀色の球をじっと見つめ始めた。
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