第10話 事務所にて
事務所の扉を開けるとクルミさんと息を切らしたコウタロウさんがくっついて。
なにしてんだよ、おいコラ。
知らなあい人が見たらふしだらな行為をしていたと取られかねない格好だ。
「なあにやってんの、コウタロウちゃん。いいなあ、オレもクルミちゃんとそんな関係になりたーい!」
僕の言葉にならない言葉を言ってのけるギンゾウさん。
「な、何を言ってるんですか、ギンゾウさん。そんなわけないでしょう?! 泣きますよ!」
「なんだそりゃ。あ、そうだ、クルミちゃん、たぶん予定通りだよお」
「良かったですね、ギンゾウ。アダン君がいなかったらその役はあなただったのに」
「え? どういう?」
「ああ、アダンちゃん、いいのいいの。気にしなくてもいいんだよお。気にしない気にしない」
「はぁ。なんか、納得できませんけど」
「まあ今からわかりますよ」
納得いかないアダンを見ながらクルミが右手を差し出す。
あ、クルミさんが元の様子に戻ってる。
「え?」
「アダン君、ポケットの中身を」
「え? ああ、はい」
確か、ポケットの中には奪われなかった魔石があったはずだ。
それをクルミさんに見せると
「確かに。これを探していたのです」
いや、何が確かに、だよ。
どういうことなの?
「それじゃあ、事務所の地下に行きましょう」
「は? 何があるんです?!」
「着いてのお楽しみです」
「は? どういう――」
「まあまあ、いいじゃないの。ほら行くよ、アダンちゃん」
「ちょ、ちょっと、待ってくださいよ! なんなんですか、一体! っていうか、なんですか?! ちょっと! ちょっとおおお!!」
そして僕は地下の部屋に連れていかれた。
ドアを開けるとそこには――。
機械で溢れかえった空間が広がっていた。
これは? 機械?
なんの機械かはわからないけどいっぱいあるぞ。
これ全部動くのか?
部屋の奥には大きな箱のようなものがある。
あれはなんだ?
他にもいろんなものがたくさん並んでいる。
ここは倉庫なのか、それにしてもすごい数の機械だ。
それに広い。
いや、そもそもなんでここに?
こんなものがあるなんて全然知らなかった。
いったいどうなっているんだよ、この事務所は。
そして、この人たちは。
何者なんだろうか。
「アダン君、魔石を」
クルミさんは右手を出して僕の魔石を待つ。
「あ、はい」
言われるがまま、彼女に手渡す。
「よし、これで準備完了ね」
「準備?」
「アダンちゃん、こっちこっち」
ギンゾウさんに手招きされる。
「あ、はい」
「これ、何か分かる?」
「わかるわけないじゃないですか、なんですか、これ?」
銀色に輝くそれは丸い球体のような形をしている。
大きさはこぶしくらい。表面には何やら複雑な模様が描かれている。
なんなんだ?
なんに使うのかまったく想像できない。
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