第9話 この人は仕事しない

「なんで僕とギンゾウさんとで発掘なんです?」


「まあたアダンちゃんが聞いてくれた! ありがとう! ほんといいな、アダンちゃん」


「しまったあ!! なんで僕はギンゾウさんに聞いちゃったんだろう」


「まあそう言うな! ドンとこい! さあ、オレの胸に飛び込んで来い!」


「もういいですよ、そういうのいいですから、ちゃんと手を動かしてください、手を!」


「そう言うなよお、オレは肉体労働には向いてないんだよお。昔から言うだろ? 泣く子も泣かずば、って」


「泣く子も泣かずばなんなんですかっ! 無いです、そんなの。ああ、いけない。この人のペースにはまっちゃいけない」


「ま、そういう訳だから、オレ、ちょっと出かけてくるね」


「全く分からないですよ、どういう訳ですか?!」


 ギンゾウさん、走っていったよ。


 くそ、まあ仕方ないか。

 あの人が真面目に仕事するはずなんてないもんなあ。


 こうして一人黙々と発掘を続ける。


 発掘の方法はさっきなんとなくクルミさんが教えてくれたけど、やったこともない素人がこんなことして大丈夫なんだろうか?


 魔石が包まれていたであろう骨の周りをスコップで掘り進めること数時間。


 ようやく骨の一部を取り出せたぞ。


 お? なんだこの小さい石。


 これが魔石か?


 とりあえずこれはポッケに片づけてと。


 と思ってたら声をかけられました。


「おい! お前!」


「え?」


 ガラ悪!

 いかにもな感じないかにもな人たちだ。


 男五人組。


「お前、モルぺスのもんか?」


「あ、はい、そうですけど」


「見ねえ顔だな。ま、いいや。そいつをこっちに渡せ」


「は? なに言ってんすか?」


「聞こえなかったのか? 今掘り出したものをこっちに渡せって言ってんだよ!」


 どうしよう。

 って、まあそもそもかなうはずもないんですけど。


 数分後。

 やられました。

 みごとに。


 食い下がったんですけど無理でした。


 そしてなんでそのタイミングで戻れるんですか、ギンゾウさん。


「あー、やられたねえ。アダンちゃん」


「いつから見てたんですか?」


「ん? そりゃあ、あいつらがやって来るところ辺りから?」


「なんで助けに来てくれないんですかっ!?」


「そりゃあ、あなた、この肉体労働に向いていない私が登場して勝てると思いですか? と逆に聞きたい!」


「エラそうに何言ってるんですか。ひどいな、ほんと」


「ま、そういうことだな」


「ぜんっぜんどういうことかわかりませんけどギンゾウさん、今までどこにいってたんですか?」


「お? 聞いてくれるの? 実は拙者、さる御仁から頼まれ、幻の聖剣を探し諸国を行脚しておる最中でしてな。ここをたまたま通りかかったところ、見知らぬ若者が悪漢に襲われており、こうして助太刀をせんと」


「あの、もういいです」


 この人に聞いちゃだめだ、ほんとこの人に意味なんかない。


「さて、んじゃあ事務所に戻ろうか。そろそろクルミちゃんもまとまっただろうからさ」


 まとまった?

 って何が?

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