第8話 不可思議な行動

「ふむ、ここですか。では、いつものようにお願いしますね」


 クルミさんがそう言うと、ギンゾウさんやコウタロウさんが素早く動き始め、魔石が出た穴にテント幕を張っていった。


「ほら、何やってんの! アダンちゃんも手伝って!」


「あ、はい?」


 何が行われるんだ?

 さっぱりわからない。


 穴の四方に幕が張られ、外からは中が見えない状態になっている。


「えっと、これって? 何がどうなってるんです?」


 何が起こるのかさっぱりわからないし尋ねても誰も答えてくれない。


「ま、新人にはいい機会だね」


 ギンゾウさんがそう言うとクルミさんが幕で囲まれた中に入っていく。


 そして


「あの、クルミさん、中でなにやってるんですか?」


「さあねえ?」

「私にはわかりかねます」


「ギンゾウさん、いつもと違って言葉数が少ないじゃないですか? クルミさん、中で何やってるんです?」


「仕方ないなあ。お答えしよう、実は中でな、クルミはん、お召し替えをなさっておるんじゃ。あんさん、覗いたらあきまへんで」


「なに言ってんですか、なんでこんなところで着替えなきゃいけないんです?」


「それは分かりまへん。せやけど今クルミはん、魔石とお話し中だんねん」


「いろいろ気になるけどなんで変な言葉使いになってるんです? いや、そこじゃない、クルミさんが魔石と話してる?」


「そうでんねん。わてらにもようわかりまへんけどな、話してまんねん」


「だからなんなんですかって、その言葉。いやちょっと何言ってるのかわかんないです」


「あー、アダンさん。わかろうとするのは無理ですねえ。私たちはそういう星にね、くぅ!」


 なんで泣いてんだよ、コウタロウさん。


 ギンゾウさんとコウタロウさんという全く役に立たない二人と話していると幕の中からクルミさんが疲れ切った顔をして現れた。


「あの、クルミさん! 何があったんですか? どういうことなんです?」


「アダン君、ごめん。今はちょっと無理。コウタロウさん」


「は、はい!」


「あなた、これ以上ないって速さでギルドに行って来てもらうけど大丈夫?」


「も、もちろんであります!」


 コウタロウさんも言葉がおかしくなってる。


「じゃ、この封筒もってギルドに提出、書類を受け取ったらすぐに事務所に届けてください」


「は、はいであります!」


 ああ、走ったてるなあ。

 ほんと早いや。


「アダンちゃん」


「ちゃん?」


 あれ?

 なんかクルミさん、いつもと雰囲気が違うけど、って昨日の今日だけど。


「そ、アダンちゃん。あなた、しばらくここで発掘してね」


 なんか指クイクイさせて呼ばれてる。


「え? あ、はい。それは――」


「あ、はいはい! オレは? オレは何したらいいの?!」


「ギンゾウは何もしないで、邪魔だから」


「ガーーーン! って、なかなか言葉にしないよね? ガーーーンって!」


「僕に言わないでくださいよ。言わないですけど」


「ふふふふ、じゃあギンゾウ、あなたも発掘ね。いい、ここで引き続き発掘してちょうだい。化石と魔石が出たら持ってきて。それじゃあ私は一旦事務所に戻るわ、みんな、後で事務所に集合ね」

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