第7話 無法地帯
「実は昨日、魔石が出まして」
なんでだかコウタロウさんはまた泣き始めた。
「あら、珍しい。でも報告はなかったですけど?」
「はい、それが、昨日のうちに奴らが来てその魔石を持って行ってしまったのです」
泣いているコウタロウさん。
「奴ら?」
思わず尋ねてしまった。
「ええ、ペルセポネの奴らです。あいつらがやってきて。くぅ……」
また泣き始めた。
「あの、ペルセポネって?」
「私たちの敵対組織です」
「敵対?」
敵対ってどういう事?
「ええ、我々発掘事務所の次の段階、ペルセポネ加工事務所の人たちですね」
「え? でもおかしくないですか? そんな人たちが勝手に持って行くなんて」
「あれ? アダンちゃん、知らないの?」
「何をですか? しまった、返事をしてしまった!」
「それでは、解説しよう。ふっふっふ、実は我々モルぺスと今や業界最大手のペルセポネは提携関係にあるのだよ」
「ええ、それは知ってます。僕、本社にいたんで」
「なんだよ、面白くないなあ。ま、いいや。んじゃあこれは? そのペルセポネとの提携には裏があってね、前社長が騙されて乗っ取られてる状態なんだよね、んでね、その前社長のカシワさんっていうのがね」
「ギンゾウ、うるさいですよ」
「えー?! ここからが面白いところなのに」
「まあ、概ねギンゾウが言った通りです。ですのでここの管理もモルぺスが行っているはずなのに、こうやってペルセポネが時々やってきてはそんな無法なことを行っているわけです」
「そんなの完全にアウトじゃないですか! どうして抗議しないんですか?!」
そんな無法が許されていいはずがない。
しかも本社にいた時にそんな話は聞いたこともない。
「アダンちゃん、話聞いてた?」
「あなたにだけは言われたくないですよ」
「おお、なかなかいい誉め言葉だ。あなたにだけ、っていい言葉だよね?」
「なんで途中で止めて誉め言葉にできるんです?」
「なんでかって? よくぞ聞いてくれました。それがさあ、前に会った食堂のおばちゃんがさ、言うんだよ、なんであんたはそう最後まで言うんだ! って。意味が分かんないからさあ、おばちゃんそれ意味、って言ったら、それよ! って言うんだよ」
「あー、もう! ほんとにもう訳が分からないですよ。ギンゾウさん、だんだんわかってきましたけど、ギンゾウさんのだいたいに意味なんかない!」
「なんだよ、ほめちぎるなよお。ほめる時はちぎらずにほめて欲しいんだよ」
「さて、もういいかしら? さて、と。コウタロウさん、それでは昨日、魔石が出た場所に連れて行ってもらえますか?」
「ああ、はい! もちろんです。こちらになります」
クルミさんについて魔石の発掘場所まで行くと、そこには見たこともないほど大きな魔獣の肋骨が埋まっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます