空想する人、実行する人
- ★★★ Excellent!!!
抜群にいい構造ですね!
創作物→現実→再現となっています。誰かが自分に見た空想を体現する。結局は他人の描いた物語なのでそこに自分が存在しなくて成功が何も成していないことを自覚していて空っぽのまま。キャラクターが辿った主観と同じ流れで、物語の没入からはじめて夢が覚めるみたいに現実に戻って渇きを体験する感じ。決まってます。
テーマとしておもしろいところはもし教義に沿って本当に死後の魂が混じり合うのだとすると斎藤とユージーンが混じり合うべきだろうところですね。自分で空想して、自分で体現したとしたらこの2人は満たされると思います。ユージーンが最後に渇望したのはそれだと思います。でもそれは決して混ざらないのだろうと感じます。
もしかしたら来世でなく、また組織としてでなくたった2人で儀式を実践したら満たされていたのかもしれません。でもそれはないですね。理屈ではなくそう思います。ユージーンって言ってますし。友人でしかない。友人という素晴らしき関係にさえ冷気を感じます。そういうところからテーマが個とは、魂とは、に広く繋がっているような感覚があります。
はじめてハヤシダさんの物語を読んだ時にハヤシダさんはあの話の小説家側なんじゃないかと感じました。あの話はライト目でまた主人公に合わせて力感が弱いのに作家味が滲んでました。出版の有無はわかりませんが、私の直観自体は間違ってないなとこれを読んで改めて確認できました。
おすすめです。