第2話 練習
年が明け、雪が解けた3月末の日曜日早朝。
使用しているグランドのネット張りが行われた。集まったのはグランドを使用している各チーム代表者とグランドの管理者の計11名である。
去年外したネットを外野、ファールグラウンドに等間隔に立っているポールにネットを張っていく。
「高木、このネットはレフト側のネットでいいんだよな?」
早川がネットを台車に乗せながらこちらに聞いてくる。
「そうだよ。」
チームからは高木、原、早川がネット張りに参加していた。
一輪車に乗せたネットが落ちないよう支えながら、ネットをレフト側へ持っていき、そこに集まっている人たちと一緒にネットを張っていく。
レフト側が終わると、ライト側、バックネットと張っていき、1時間程でネットは張り終わった。
「皆さん、お疲れました。」
グラウンドの管理者からあいさつとグラウンドの使用についての注意事項を聞き、解散となった。
「おう、お疲れ。」
3人で話をしている時、後ろから声を掛けられ、振り返ってみると草野球チームゴリラクラブの監督小林が話しかけてきた。
小林は50代の細見で長身の人物である。
「お疲れ様です。」
「今年もよろしな。また試合やろうや。」
「はい。あの、うち今年でチーム解散します。」
「え、どうして?」
原の言葉に小林は驚いたような顔をする。
「人が集まらなくなりましたので…。」
「新しく入る奴はいないのか?」
「はい、いろいろと聞いてみたのですが。」
「そうか…。どんどんチームが減っていくな。」
「時代の流れですかね。」
「うーん…、どうなんだろうな。」
小林は顎に手を当てながら、考え込んでしまった。
「小林さんのところは、人集めはどうやっているんですか?」
「うちか? うちは町内やチームの若いやつの繋がりで人を集めているよ。
後輩とか伝手はないのか?」
「あたってみたのですが、ダメでした。」
原は苦笑いしながら小林に答えた。
それから少し話をして、家に帰っていった。
4月中旬 金曜日の夜
ハゲタカの今年初の練習の日である。
仕事が長引いてしまい、30分遅れてグラウンドに着くとみんなはキャッチボールをしていた。
「お疲れ様です。」
「高木さんお疲れ様です。」
ベンチに入ると後輩の吉本がこちらに気づき、声をかけてきた。
グラウンドには吉本の他に、原、早川と今川、今川の同年代の川野、あとは知らないのが2人の計7人がいた。
「奥にいる若い2人は誰?」
「あの2人は川野さんが連れてきてくれたんです。
1人は親戚の子で、県外の大学に行ってて、仕事が決まらず卒業して帰ってきたそうです。
もう1人はその子の友達で、事務の仕事をしているそうです。」
「そうなんだ。新しい人が来るなんて珍しいな。」
そんな話をしながら、練習に参加する。
キャッチボール、トスバッティングと行い、休憩を挟んでノックとなった。
「阿部君、五十嵐君ポジションどこがやりたい?」
ノックバットを構えながら原が若い2人に声をかける。
「え~と、サードで…。」
阿部と呼ばれたひょろっとした人物は困りながら答える。
「外野でお願いします。」
阿部の隣にいた五十嵐と呼ばれたなふっくらとした人物は微笑みながら答えた。
みんなが守備位置に着く。
「捕ったらファーストね!」
そう原が言うとサードから、ノックが始まる。
最初は緩い正面のゴロから始まり、徐々に強い打球になっていく。
今年初ということもあり、みんなおぼつかない様子でボールを捌いていく。
「阿部君はおっかなびっくりしながら捕ってるな。」
ボールを渡しながら、原に声をかける。
「仕方ないよ、阿部君と五十嵐君は野球やったことがないみたいだし。」
ハハハっと笑いながら原はノックを打っていく。
さっき休憩の時に本人らから聞いたのだが、学生時代は他のスポーツをやっていて、野球は全くやったことがないそうだ。
阿部は、たまたま動画投稿サイトに投稿されていた草野球チームの動画を見て、野球がやってみたくなったそうだ。
ただ、どうすればいいかわからず何もしていなかったが、今回川野に誘われてやってみることにしたそうだ。
五十嵐は阿部に誘われたことと、運動不足で学生時代より体重が増えてしまったため、始めることにしたそうだ。
ノックを30分くらい行い、バッティング練習をし、今日の練習は終了となった。
「お疲れ。阿部君、五十嵐君どうだった?」
「全然捕れなかったですけど、楽しかったです。」
五十嵐は笑いながら原に答え、
「ゴロが怖いです。」
阿部は苦笑いしながら答えた。
「最初は仕方ないよ。慣れるしかないよ。」
「今年で解散するチームだけど、暇な時遊びに来てくれよ。」
横から早川が2人に声をかける。
「素人2人でよければ来ますよ!」
「ありがとう。一応毎週金曜日の夜やってるからね。」
原は2人にお礼を言い、連絡先を聞いた。
その後、話をして、2人は先に帰っていった。
「川野さん、2人も連れてきてくれてありがとうございます。これで助っ人を呼ぶのが楽になります。」
「いや、声掛けたらたまたま来てくれただけだよ。素人だから戦力としては期待できないけど。」
「いやいや、人が来てくれるだけでありがたいですよ。」
その後、今年の部費の徴収、ボールやバットなどの道具管理、保管場所の話をし、解散となった。
ボールとバット類は、監督の原が管理保管をし、キャッチャー道具はキャッチャーの自分が道具管理をすることになった。
ラストゲーム はかせ @hakase0307
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