ラストゲーム

はかせ

第1話 解散

「チームを解散しよう。」


 今年最後のナイターでの練習試合が終わり、居酒屋にてみんなで飲んでいる時だった。

草野球チーム ハゲタカ監督の原はビールを片手にそう言った。


「そうだな。人が集まらないし、もう限界だな。解散しよう。」


原と同い年の早川が続いて言った。

人が集まらない…、その通りだな。

目の前にあるビールを飲みながら高木はそう思った。

今日の試合もチームメンバーは4人しか集まらず、原と早川の伝手を使い、他のチームから5人助っ人として来てもらって何とか試合ができたのだ。


「解散?」


チーム最年長の今川は不服そうな顔をしながら、原達を見ている。

今川はこのチームを立ち上げた本人である。

チームに愛着があるため、解散はしたくないのだろう。


「まず人が集まらないんですよ。集まらなきゃ、できなんですよ。」

「集まるようにするのが監督だろ。」

「集まるように連絡を早めに入れて、足りない人数は他のチームから借りてきたり、集める努力はしているんですよ。」

解散か続けるか、テーブルを挟んで原と今川が言い合い、原の意見に早川が同意をする。


3人の言い合う姿を見ながら、考える。

人が集まるにはどうすればいいかを。


「高木はどう思う?」


今川は何も話さない高木に話しかけてきた。


「野球はやりたいですけど、解散に賛成です。」

「どうして? 活動頻度をさげたり、来ない人にもっと声をかけたりとやりようがあるだろう。」

「みんな仕事や家族、子供の世話で忙しいから来れないんだと思います。それに年齢的にも厳しいと思いますよ。」


そう、このチームの平均年齢は30代前半である。みんないい年なのである。

30代前半であれば結婚して子供がいる人もいるし、親の介護や、仕事に忙しい人もいる。

そういった理由でみんな集まれないのだ。

まぁ、プレーすることに興味がなくなった人もいるのだろう。


「それに練習試合とはいえ、自分のチームのメンバーが助っ人より少ないのは駄目じゃないですか。」

「………。」


今川は何も言わず、3人を見る。


「まぁ、ここでいきなり解散もあれなんで来年の市民大会で最後にしましょう。」


原は今川にそういうと、ビールを店員に注文し、解散の話はそれ以上話さなかった。

あとは気のすむまで、飲み、今日の練習試合について話をし、日付が替わる頃にお開きとなった。

後日、監督の原からチーム全員に来年の市民大会が終わったらチーム解散と連絡がきた。

今川はあの時の飲み会が終わった後、後輩の吉本に電話で愚痴っていたらしい。










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