第5話

 ハンナから受け取ったアイテム、聖女の涙は一時的に呪いを解くことが出来るアイテム。だから瓶の蓋を開けて、これを振りかければ、呪われた装備は壊れてしまうかもしれない。そういう危険性もあった。


 だけどハンナの言う通り、どのみち今の俺達じゃアレスに勝てない。俺は最後の賭けに出て、まずは使えなくなった鎧に振りかけた!


 眩いばかりの光が鎧から放たれ、黒かった鎧が鮮やかなブルーへと変わる。アレスが振り下ろした剣は──貫通することなく鎧で止まった。


「クソっ!」


 アレスは攻撃が効かなかったことに腹を立て、一旦下がる。呪われた鎧のままだったら確実にダメージを受けていた。これはハンナの言う通り覚醒しているじゃないか!?


 アレスは布袋から火炎玉を取り出し俺に向かって投げつけてくる。


 続いて俺は盾に聖女の涙を振りかけ──黒からブルーへと変わる盾で防いだ。当たると炎を放つ火炎玉だが、盾が吸収してくれたおかげで、またもやノーダメージで済む。


 それどころか「──リフレクトッ」と、お返しすることが出来た。この効果は呪いの装備の時と一緒だが、体力は無くなっていない。


 アレスは難なく避けたが、悔しそうな表情を浮かべる。その後の行動は──何とハンナに向かって走り出した。


 卑怯な真似はしないなんて格好つけていたが、いよいよ余裕がなくなってきたな。


 俺は直ぐにブーツの呪いを解く。すると光と共にブーツに羽が生え、体が浮いているんじゃないかと思うぐらい軽くなった。


 地面を蹴ると、一瞬でアレスに追いつく。その勢いで俺は、アレスの背中に蹴りを入れる! ──アレスはよろめき今日、初めて地面に膝をついた。


 アレスが立とうとしている間に、俺はいよいよ剣に聖女の涙を振りかける。すると錆びついていた剣身の形状がみるみる変わっていき、半透明の青色をした綺麗な剣身へと変わる。これはッ!?


「ま……まさか、それはッ! アルティメットソード!?」


 立ち上がったアレスはそう言って、後ずさりを始める。


 そう……探求者ギルドに置いてあったアイテム図鑑で見た事ある。まさしく俺が握っている剣は、アルティメットソードにそっくりだった。


 あらゆる物を切り裂く剣、アルティメットソード……これが本物なら──俺は試しに近くにあった岩に、剣を軽く当ててみる。


 するといとも簡単に、岩は真っ二つになった。本物だ……俺は思わずニヤつく。


 青ざめた表情でそれをみていたアレスに俺は「やるか?」と聞いてみる。


「い、いや……やめておく」

「そうか、残念だ」


 アレスは逃げるかのように、仲間たちの方へと駆け寄って行く。俺は「ハンナ」と声を掛け、宝箱に向かって歩き出した。


 アレス達が帰還したのを見送ると、俺達は早速、宝箱を開けてみる。そこには錆びたネックレスが入っていた。ネックレスのトップには青い宝石が付いていて、何やら紋章が彫り込まれている。


「これ……呪われた装備かな?」

「そうじゃない?」

「だよな……じゃあ、また1つ楽しみが出来たな!?」

「ふふふ、そうね」


 俺はネックレスを手に取り、装備する。


「じゃあ、ハンナ。帰ろうか?」

「うん」


 こうして俺達は無事に帰還する──俺達は話し合い、アレス達と戦い、勝ったことは内緒にして過ごした。それでも俺達は地道に探索を続け、Sランク探求者となった。


 Sランク探求者ともなると、仲間にならないか? と、沢山の人に誘われることになったが……ハンナが人見知り激しいのでと断った。


 その度に俺はハンナに「恥ずかしいこと言わないで」と、頭をコツかれるのだった。


 お互い特にこれといって目的はないが……俺達の探索はまだまだ続く。ダンジョンの中には、まだまだ面白そうな事が待っている。そんな気がするから………。


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しくじった俺はS級パーティから追放され、置き去りにされる。新しいパートナーに拾われた俺は、呪われた物しか装備出来ないスキルを活かして成り上がる。覚醒した時の俺の力はチート級で、もう誰も寄せ付けない。 若葉結実(わかば ゆいみ) @nizyuuzinkaku

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