第2話 三鈷剣

三鈷剣(さんこけん)。

過去に何度も聖騎士は召喚され、


『ハサン』と呼ばれたらしい。


女聖騎士って他にもいたのかな?


それに魔王の名前は

『スマター』って言うらしい。


素股?

名前が恥ずい、下品。


そんな恥ずい名前の奴となんで

戦うの??


いや、そんな事より

目の前の『このイモムシね』


ゴロリと呼ばれている

イモムシ型の魔物=アヤカシが、

私の行く手を阻む。


うげ〜。私虫無理〜。


でも、こいつやる気マンマンね。


うげ〜。

ウネウネしてるし、

なんか青筋みたいなの見える〜。


でも、私箱入り娘だから

箸より重い物持ったこと無いよ〜。


でも、三鈷剣は軽い!

箸のように!


こうなったらやってやる。


『いや〜ぁぁぁ!!』

内股で、へっぴり腰でゴロリに向かうハサンこと栞。


当然、硬い頭に跳ね返され、

体当たりで吹っ飛ばされる。


うっ!い、痛っ…………くない!


マーラの世界で聖騎士のソウルパワーは3倍になるという。

後からそれは聞いたんだけどね。


人間の世界だったら死んでたと思う。


いける!


なんか必殺技とか魔法とか無いの!?


『波動スラッシュだ!ハサン!』

見ると、あのオッサン(ルビク)が、

なんか声を枯らして叫んでる。


波動、スラッシュ?!


『思いを込めて剣を振れ!』

ルビクが叫ぶ。


波動スラーーーッシュッッ!!!


思いっきりゴロリ(イモムシ)めがけて

三鈷剣を振りかざす。


剣先から青白い波が勢い良く、

放出される。


ゴロリは、真っ二つに切断され、

紫色の虫汁が飛び散る。


い、いゃあああ〜!


ルビクは、なんとゴロリの肉片を集め始めた。


どうするの?と聞くと

ゴロリは焼いても煮ても美味しいらしい。


食うの?!うげー。


こうして私の異世界ライフが始まるのである。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

宿屋へ向かう。

とにかく疲れた。


まじで、こんなオッサンと二人旅?


ヤラレるよ。貞操の危機よ。


「部屋は別だからね!

入って来ないでよ。入って来たら斬る!」

ルビクを牽制しながら部屋に入るハサン。


もー。なんで私が聖騎士なの?

なんで魔王と闘うの?


意味わかんない。

ケータイもカラオケも、タピオカミルクティーも、友達すらいない異世界やだ。


帰りたい。お母さん……。

涙に暮れながらも、疲れ果てて

いつしか眠ってしまった。


チュンチュン……。


小鳥の囀り(さえずり)で目を覚ます。


ここは、カントン国のカセイ地方と言うみたい。


んで、泊まったこの村はヤーラ村。

長閑な村で馬のような動物が、

宿屋の側で草を食べてる。


あの馬のような動物はヒヒンと言うみたい。移動用に使われてるので、本当に馬として使ってるのね。


木窓を開けると、とてもいい景色と風。

あー。異世界の朝は素敵。


遠くに山々が朝の光で輝いている。

近くには小川があって、女の人が洗濯をしている。


大変だなー。洗濯機も無いもんね。

鼻が長い人だけかと思ったら、

エルフ?みたいな種族や、普通の人間と変わらない人や、亜人と呼ばれる半人半獣みたいな人、獣人族という戦闘になると獣化する種族もあったりするみたい。


ちなみに、宿屋の主はドワーフ。

鍛冶屋とかで物語やゲームに出てくるね。


私あんまりゲームに詳しくないけど、

お兄ちゃんが『ドラゴンクエストラ10』やってるのを見たことがあった。


そういえば、昨日ゴロリ倒してレベルが上がったみたい。


レベル2だって。

何となく昨日より身体が軽い。

いつも朝弱かったのに、今日の目覚めサイコー。


朝ごはん食べたいなー。


よし、食堂に行ってみよう。

あ、オッサンいる。


「おはよー」

栞(しおり)は、ルビクに挨拶する。


宿屋の主人や女将さんにも

「おはようございます!」

と元気に挨拶する栞。


宿屋の主人も女将さんも

ニコニコと「おはよう。寝れた?」

と気持ちよく返してくれる。


朝の挨拶気持ちいいな。


ん?経験値が上がった?


え!!レベル3?

なんで!?


挨拶しただけなのに?


そうなんだ。この世界では

挨拶すると経験値が敵を倒すより上がるのね。


朝食は黒小麦の柔らかいパンと

野菜のスープ。温かいミルクと、

そして・・・


ゴロリの串焼き!!

ギャー。いらなーい。


ルビクは旨いから食ってご覧と

勧めてくる。


一口だけ。

ん?!


うまっ!

何これ〜!

鶏肉じゃん!

見た目はアレだけど美味しい!


パンもふかふかしていて、

とっても甘い。

温かいミルクは、ヒヒンの乳なんだそう。


コクがあって美味しい〜。

はー幸せ。


いやいや騙されないよ。

ちょっと真面目にルビクに聖騎士と魔王について聞いとかないと。


「ちゃんと説明してよ。」

ルビクに詰め寄るハサン《しおり》だった。



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17歳花のJKは異世界召喚で聖騎士ハサンとなり、魔王に挑む のんたろうさん @nontarochannel

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