おっさんダンジョン

属-金閣

第1話  おっさんダンジョン

「はぁー、はぁー、はぁー……」


 私は息を切らし膝に手をついた。


「何なんだ、あの場所は」


 ゆっくりと顔を上げて振り返る。

 そこには、大量のおっさんがギュウギュウに詰まり一つの空間が存在していた。


「少し前まで、あんなにたくさん居なかったのに、ちょっと時間が経つとあんなに増えるなんて聞いてないぞ」


 事前に聞いていた話と違う事に怒りが湧き上がった。

 が、今は圧迫されていた時の気持ち悪さが上回り、あのギュウギュウに詰まったおっさんの中から抜け出せた事に疲れていた。

 ぐったりした私は、目の前にあった椅子に座る。


「クッソ、汗もかいて気持ち悪い。さて、どうするかな」


 息を整えながらこの後の事を考えだす。


「ここでゆっくりしてる訳には、行かないんだよね。時間もないし。かと言って、何の策もなくあのおっさんの中に飛び込むのは、危険だ」


 視線の先にある、ギュウギュウに詰まったおっさんの空間は、一定時間で入口が締まり、一定時間後にまた入口が開いて入る者を待ち受けていた。


「扉が開いている時に勢いよく行けば入れるが、その後扉が閉まるとあの中に閉じ込められるんだよね。あの中じゃ、身動きなんて全然取れないし、体も押されておっさんに密着して気持ち悪いんだよな……」


 腕を組みながら何か策はないものかと唸りながら考え続ける。

 だが、良い策は思いつかないまま時間だけが過ぎて行った。

 その後、ふと腕に付けた時計に視線を向ける。


「ヤバイ、考え込んでいたらこんな時間じゃない」


 咄嗟に椅子から立ち上がり、扉が閉まっている方へと歩いて行く。

 立ち止まり、次に入口が開く時間まで待っていると、正面を勢いよく鉄の乗り物が目の前を過ぎて行くが、徐々にスピードが遅くなり止まる。

 そして目の前に例の入口が現れる。

 入口から勢いよく空気が漏れる音を立てると、閉まっていた入口の扉が開く。

 次の瞬間、開いた入口から雪崩のようにおっさんらが溢れ出て来る。

 人の放出が終わり、私は中を覗くとそこには未だにギュウギュウに詰まったおっさんたちが目に入った。


「すーーはーー」


 一度大きく深呼吸をして、私はゆっくりとおっさんダンジョンへと再び足を踏み入れた。それと同時に、心である決心をした。


「(明日は、10分いや30分は早く家を出よう……)」

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おっさんダンジョン 属-金閣 @syunnkasyuutou

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