54話 連携
「
静かにそのくノ一はメイの方へと視線を動かす。
「え、ああ、国の中に入る時にかけてきた魔術のこと? あんなしょぼいものすぐに解除しちゃったわよ」
メイは軽い感じで言う。
「ちなみにハルもかかってないわよ。ね?」
「……言わなくてよかったのに」
ハルは不満そうに言う。
「後ろから五月蠅いのが来てるしさっさと終わらせる」
次の瞬間、ハルの体はくノ一の背後にあった。
まさに瞬間移動。目で追うことはできなかった。
「くっ!?」
背後から振りかざされたダガーをクナイで受け止める。
ぶつかり合ったそれらが高い音を奏でる。
ハルはすかさずもう一本のダガーを突き立てるが、くノ一は後方に飛びそれを避ける。
それを追いひたすら追撃するハル。
くノ一は守ることで精一杯だった。
その時、ハルのダガーがくノ一の脇腹を掠める。
くノ一は一瞬動きが鈍くなる。
そこに追い打ちをかけるようにハルのダガーが振りかざされる。
くノ一は辛うじてそれを避け、今までより大きく後退する。
それにより着地する時多少の隙が生まれる。
「『ケルガン』!」
そこにメイは魔術を叩き込んだ。
「――」
声にはならない音を出し、吹き飛ばされるくノ一。
屋根の端の方でその体は止まり、動かなくなった。
その時、俺の体は軽くなる。
「……死んだのか?」
「いや、魔力の塊をぶつけて強いショックを与えただけだから気絶しただけよ。その子に人の死んでいく様は見せたくないでしょ」
ハルは俺の腕の中のセルウェラに視線を向ける。
「それより、後ろから来てる。あの人数は面倒だしさっさと逃げよう」
ハルが俺達が来た方向を見ながら言う。
確かに人が集まってきている。
「わかった」
俺達は再び走り出す。もう少しで国の外だ。
結局休むことができなかったため、少し落ち着いたら休憩がしたい。
あと、ノレジは無事だろうか。
結局どうすることも出来なかった自分を悔い、自己嫌悪する。
そして、俺たちは国境に建てられた壁を越えてその先へと向かう。
もう暗くなり始めた森の中に入り込み、追っ手を巻いた。
勇者は世界の敵となる 飛躍ハヤト @hyakuhayato
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。勇者は世界の敵となるの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます