第36話 完

移住者達の敵であるロク・ジュンコ・ケン・サギの敵対勢力は全員

殺害されたが、平山とシンを失うことになった。

任務が終った石川は、すぐに立ち去ろうとはぜずに、ライフルを持っ

て移住者達に近づいた。

それを見た上崎は恐怖で小刻みに震え始めた。

彼女から見れば石川が仲間を撃たないという保証はどこにもない。

「ごめんね、せっかくの新築祝いと結婚の宴が台無しになったわね」

石川はすまなそうに岡田と上崎を見た。

「石川さん、私達を助けて大丈夫なんですか?」

上崎は涙声で確かめた。

「大丈夫よ。たぶん視聴率が高いうちはね。 私、あなた達の番組

好きだし、これからもずっと見続けるわ。あなた達のこと、頑張って

生き延びてね。応援してるから」

石川は彼女の肩を元気付けるように軽く撫でた。

それから石川は、轟の屍(しかばね)の側へ行きライフルを拾い、ゆっくりとヨシの方に歩いて行った。彼は困惑した顔で近寄ってくる石川を見た。

「轟のライフルは置いていくわ。何かあったら博士達を守ってあげてね」

残念ながら博士の武器をもたないという考えは間違ってるわ! 平和は武力の上に成り立つものなのよ。あなたにここで最高の武器をあげる! 上手に使ってね じゃあ」

ヨシは複雑な表情でライフルを受け取ったが何も言葉を返さなかった。石川は名残惜しそうに一人一人全員をを見つめた後、決心したように背を向けた。

一方で、轟の死体がタンカーに乗せられ運ばれていく。刑務官の坂上と太野がゆっくりと轟の死体を持ち上げた。石川はその隣までくると轟の屍に向かって深々と礼をした。


やがてヨシ達は、静かに抱き合ってずっと眠っているシンと平山の

周りに集まった。

誰も動かないまま何時間立ったのだろう。 辺りはもう既に暗くなっていた。                      


 おわり    



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

カミノキ 村青 雨京 @murao-ukyo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ