プロローグ3
生田晴を見送ってから慌ただしく動き出したバステトは、いつまでもいじけている上司のクレアティオに問いかける。
「いつまでうじうじといじけているつもりですか」
「だって私悪くないもん、可哀想だから助けてあげようって思っただけだもん」
「いい歳して『もん』とか使わないで下さいよ」
『だって』と、なおいじけるクレアに多大に呆れつつも、嫌いにはなれない。この女神は、後先考えずに突っ走り、周りの迷惑を考えないかつ、注意しても同じことを繰り返す。しかし、その殆どは優しさから来る行動なのだ。今回の生田晴さんの件もそうだ。生田晴さんは本来あの交通事故で亡くなる筈では “なかった” 。
あの事故自体、本当は起こらなかった筈だったのだが、地球を統治する神は誤って生田晴さんの運命を捻じ曲げてしまい、その事を謝罪するでもなく何も告げずに生田晴さん自体の存在を、なかったことにしようとしたため、この女神は無理矢理に生田晴さんを私達の世界へ連れて来た。
その結果、地球の神から苦情が来たというのも、私がアドリブでこの女神に合わせたに過ぎない。地球の神からすれば、自分のミスを隠せるなら何でも良かったため、実際は苦情などなかった。
「確かに、生田晴さんには同じ神として申し訳なく思います。今回の事も情状酌量の余地はあるでしょう。ですが、一言相談くらいして下さい。」
「、、、はい」
「分かっていただけたならいいです」
本当に直るかはさておき、この駄女神のことは一先ずこれくらいでいいでしょう。後しなければならないのが生田晴さんの転生先と、プレゼントするスキルなどを決めなければなりません。
(彼の要望である自動二輪での異世界旅に必要なものがいいのでしょうが、私自身旅をしたことが無いので少し難しいですね。)
「お二人ともこんなところで何してるんですー?」
そんな時たまたま通りかかったのか後ろからよく知る人物から話かけられた。
「貴方こそ珍しいですね、ガルティア」
彼女はクレアティオが生み出した属性神の一人で、風神として知られている。自由気ままに世界中を移動し続けているため、こうして神界に現れるのは非常に珍しい。
「たまたま近くを通りかかったら、二人の気配がしたから寄ってみたのー」
「なるほど、それはタイミングが良かったです。少し貴方の意見を聞きたいのですが問題ないですね?」
「難しい事じゃなければいいよー」
「それはよかった、実はまたこの駄女神が暴走してしまいまして、地球の人間の魂を一人だけ私たちの世界に連れて来たのですが、旅をするのに有用なスキルを与える事になったのですが、どういう物が良いでしょうか」
一応簡単にではあるが事情を説明したところ、ガルティア的には特にこれと言ってないと言うと、また何処かへと消えていった。仕方なくその辺で燃え尽きたように座り込んでいる駄女神と相談しながら決めるしかない。
「はぁ、なぜ私がこんなに疲れなければならないのでしょう、、、」
「ごめんなさい」
つい漏れてしまった愚痴に、謝罪という形で答えたクレアティオは、そのまま机に向かい、生田晴さんへ与えるスキルを検討しはじめた。
異世界ツーリング旅 上村 有 @shimonz
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