第4話 猫と熊と人間と
「改めましてよろしくお願いします」
ワグノルは歩きながら説明してくれる。優はその横についてそれを聞く。
「ここはノアール様の自宅の木を中心に十字に街が広がっています。なのでここが1番栄えてます。どこか気になるところはありますか?」
人の賑やかさに気を取られそんなこと1ミリたりとも考えていなかったし、まずここがどこだか分からない。
「えっと、気になるとゆうか全てが分からない感じです。」
ワグノルは驚いて、
「、、ノアール様説明してくれませんでしたか?」
頷く。
「はあ、、」
また大きなため息を吐いて頭を抱える。
「ほんとになんにも聞いてないのですね、家では何をしてらしたんですか?」
「、、ご飯食べました」
「そうですか、ではここの世界について軽く説明致しますね」
「ここは優様方人間が生活する世界とはまた別の空間に属します。その中でもまたいくつかの国に別れるのですがそのひとつがノアール様を頭とするカトゥース国です。」
「この国の元来の住人は獣人です。ノアール様は猫で、私は熊ですね。」
「普段は人型を扮するのですが、尾や耳はまれに出します。出してる方が楽ですしね」
と言ってワグノルはスラックスの間からぽわぽわした丸っこい茶色のしっぽと、くせ毛の間から耳をぽんと出す。
「普段はこんな感じです。国にもよるのですがここは比較的緩いので、他国からの住人も一定数います。ほらちょうどあそこに魚人族の方が。」
そう言って示した方向には肌があおい鱗で包まれたお兄さん。
魚特有の突出した顔ではなくただの人間のような顔つき。
「海とかもあるんですよ」
「そしてあらかじめ申しますと、優様がここに呼ばれたのはただのノアール様の好みです。」
「こちらからは向こうの様子を見ることが出来るので、自分の気分次第で人間を招く領主さまもよくいらっしゃいます。」
「しかし、それができるのは安全上などの問題のため領主様のような力を持った方のみです。人間は希少価値が高く、高値で売れますのでね。」
「俺の生活を見てたってことですか、?」
「まあ、はい、そうなりますね」
衝撃的な事実。
いつから見られてたのだろう恥ずかしいことしかしてない気がする。プライバシーの欠けらも無いのかこの国は!
「ワグノルさん、、」
「はい、ワグでいいですよ」
いろいろと聞きたいことがあるのだがそれよりもどうすればいいのか、
「俺これからどうすればいいですか?」
「ああ、それはぶっちゃけ自由です」
「!」
思ってもみない答え。てっきりもう解放しないとか言われるんじゃないかと思っていた。
「しかし、あの方の性格を見たでしょう。優様が帰ってしまわれると拗ねて動かなくなります。なので、こちらとしてはいてもらいたいのですが。」
「できるだけ希望は叶えるつもりでおります。せめて夏休み中だけでもいかがですか?」
少し食い気味にそう言われた。
ちょうど明日から夏休み。補習はあるが特に予定もなかったので、あっさりと承諾した。
ゲームみたいな世界観も気になってたしね、、
「ありがとうございます。」
深深と頭を下げられ、驚く。そんなにあの男は厄介なのか。
というかそもそも帰り方も分からない。来た道とおなじように帰れるとは思えないし。
「ではとりあえず今日のところはお休みになってはいかがでしょう。衣服の替えをご用意しますね。制服のままではすごしにくいでしょうから。」
「それとノアール様に対しては敬語は使わなくてよろしいかと、」
「え、領主なのにいいんですか?」
少し間があって、
「その方が喜びますよ。」と。
気がかりではあるがワグさんがそう言っているからいいのだろう。また本人にも聞いてみたらいいし。
「戻りましょうk」
「ただいまああ!!」
瞬間移動でだがドリフトをしたような勢いでノアールが帰ってきた。
それと同時に俺に抱きつくように激突。180はあるだろう大の男の飛びつきの衝撃に耐えるのにはまだ俺は非力で、軽く飛ばされる。
パワフル帰参に動揺することなく、ワグノルは淡々と返す。
慣れているのだろう。
「お帰りなさい、仕事終わりましたか?」
「うん、バッチリ!」
飛ばされた俺を起こしまた腕の中にしまいながらピースを作る。
「それより優に変なこと吹き込まなかっただろうね、、本当は僕が案内したかったんだけど、、」
「あ、それより優!言い忘れてたけど僕のことはノアールって呼んでね!敬語とかも要らないからさ!」
ワグノルは「ほら言ったでしょう」と微笑みを俺に向ける。
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