第27話 女神との邂逅


 ふと気がつくととても綺麗な場所にいた。

 とても澄んだ空気と風に吹かれて揺れる草花。

 小鳥の囀る声も聞こえてくる。


 「すげー。めちゃくちゃ気持ちいい場所だ……。」


 「ほんと?! ヤクルに褒められてすっごい嬉しい!」


 声が聞こえたと思ったら後ろから思いっきり抱きつかれた。

 勢いあって倒れそうになったけど、そこはいつもの体幹トレーニングのおかげで踏ん張った。


 「ナディ様。突然過ぎますよ? 流石のヤクルも戸惑っております。」


 ん?

 今度はヤムリの声だな。

 どこいるんだ?


 「え? ヤムリ、もしかしてこの犬?」


 そう、足元に可愛い子犬と猫がいた。

 確かにこの犬からヤムリのオーラを感じる。


 「うむ、本当にオーラを認識するのが上手くなったな。そうだ、この世界では私は犬、チグルは猫を模している。」


 「ヤクルさん、どうぞよろしくお願いします。猫のチグルです。」


 「もう! 私も自己紹介するんだから! ヤクル! 私がナディ! 世界の管理者よ!」


 抱きつきから解放されたら目の前にものすごく綺麗な女性がいた。

 長い金髪。

 青い目。

 スタイルも完璧。

 出るところはでて、引っ込むところは引っこんでる。


 完璧な美女を想像したらこうなるだろうな、と言う感じの美女。


 「ナディ様……。」


 「な、なに? そんなにジッと見つめられたら私も恥ずかしいわよ……。」


 少し頬を赤らめ、もじもじするナディ様。


 「あ、すいません。あまりにお綺麗で……。ヤクルです。よろしくお願いします。」


 「もう! 本当に正直ね! うん、こちらこそよろしくね!」


 はじめましてっていう感情とようやく会えたっていう感情、それに懐かしいっていう感情が溢れてきた。

 なんでか分からないけど、少し涙も。


 「ヤクル、私も同じ気持ちよ。実はね、あなたは私の分身でもあるの。いや、分身になったって言った方がいいのかな? もちろんヤクルの人格はヤクルのままよ?」


 「分身……ですか。いや、なんとなくわかる気がします。僕の白いオーラはナディ様の白いオーラと同じだから。なんで僕だけ色がついていないのかって思ってたんですけど、ナディ様の分身であるなら理解できるかな、と。」


 「そうね、私はね、神様なんてヤムリ達がいうけど管理者という方が正しいの。七つの世界を創造したときに私は管理者になった。でもね、管理者っていうのは始まりのこの地、ナディアラでしか存在できないの。だからそれぞれの世界に調整者を見つけて加護を与えていたんだけど……。」


 「調整者ですか……。そういえば僕の使命も調整役だと言われてましたね、ヤムリを通して。」


 「そうね、でもヤクルは調整者とは少し違うの。普通は自分の世界でしか存在できないのだけど、ヤクルだけは七つの世界に渡れるわ。私の代わりにね。そういうふうに転生してもらったから。」


 「ナディ様に作られた……ってことですか? なら今の両親は……。」


 「あ、違うわよ! ちゃんとあなたはご両親が愛し合って生まれた、黒木俊介なの! 人格はそのまま受け継いでもらったし、オーラも私のと同じようなオーラにしたけど。あなたはまさしく黒木健介と黒木さやかの息子さんよ。しっかりと愛される権利があるわ。」


 「そうですか……。少し安心しました。両親は大好きなので。それで僕の使命は?」


 「今はとりあえず楽しんで生きていってもらえればいいわ。他の世界もまだ平和だしね。でも、何かあったときに調整役としてその世界に渡って欲しいの。私では、調整者だけではどうにもならないようなことがあったら、なんだけど。」


 「今すぐってわけじゃないんですね。わかりました。その使命承ります。」


 「このヤムリ、そしてチグルもヤクルの共として使命承ります。」


 「はい。よろしくお願いします。」


 ヤムリ、チグルとも一緒なら安心だね。

 僕だけじゃあ調子に乗りそうだし。


 「ありがと! 三人とも。それじゃあそれぞれの世界の調整者を紹介していくわね!」







 え?


 今から?


 

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尊いチャクラに魅せられて ヤックル @yaqquru

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