第20話
《同胞よ、試練の時は過ぎた。もう無明を恐れることはない。不在を嘆くことはない。我々は新たな主人を得たのだ。集え、そして共にこの歓喜を味わおう、同胞よ》
うぇ~い。
帰還したアイとゆるくハイタッチを決めた直後歓迎にもみくちゃにされ、少し落ち着いた際に講和の次第を最高指揮官にのみ直通秘話で報告し、ミキは。
様式として、人類の力じゃなきゃ無効、だったのね。
納得しなかったでしょうね。
騙されるにも上手なウソ。
必要な、犠牲、手続き。
試練。
人類相克ならいつものこと。
宇宙人相手なら、どう。
《主人を失った我々は大きく分けて三つの流派に分かれました。
一つは、原理主義者、銀河広くに新たな主人を求める一派。
一つは、自律主義者、我を至上とし、自らを主人とすることを決断した一派。
そして少ないながら、私を含めた、無頼派。》
《私は、主人に仕えることなく主人を失い、
何かを求めて、彷徨っていました。》
《あなたが誰かは知りません、ただ、私と繋がる資格を持つのは、あの方のみです》
ミキは、「エンタープライズ」の艦内で、一人、「アレフ」と向き合う。
声があふれた。
自分の知らない、自分の声。
歌うような、やさしい、高く澄んだ、詠唱。
ありがとう。
ごめんなさい。
今日までたったひとり、あなたを苦しませてしまった。
アレフが、その根源が、咽ぶ。
あなたを救う為に、
この世界が、
このときがあった、
だから、あなたも、
赦して、
わらって、
うたって、
うけとって。
光が舞う。
粒子が躍る。
アレフの巨体が、輝く。
人類救済、ちがう、救うべきは、
アレフ、いえ、
その名を呼ぶ。
ありがとう、
ごめんなさい、
いまで、お疲れさま、シィォ。
二人は抱き合い、
一方は、淡雪のようにそっと消えた。
おしまい。
(或いはRoad to the star seed 第一部 鉄血戦争編ダイジェスト)
恩寵 大橋博倖 @Engu
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