18.ダンスパーティーにて

「まずは俺だろ」


トップバッターは、ツンデレ王子のテオ。


「ラストはノアに譲ったんだから、ちゃんと踊れよ?」

「はいはい」


テオのダンスは安定感があって頼もしい。

そして、ちゃんと王族としてのプライドもある、威厳のあるダンスという感じ。


「そういえば……あれはどうなったの?」

「あれ?」

「ほら……陛下に」

「あぁ……」


私は元々陛下に嫌われていたらしい。

それが今回テオを危険に晒したという事で、さらに躍起になられて縁を切れと迫られているという訳だ。


「時間はかかりそうだけど……あの人は基本親バカなだけだから、大丈夫だ」

「……そう」


つい心配になってしまうけど、ここら辺は信じて任せてしまうのも一つの策だろう。


「任せたからね。テオ」

「あぁ、任された」


そんな会話をして、テオとのダンスはあっという間に終わった。


「エリ……リズ、様」


次は……すっかり聖女なソフィアの番だ。


「良いんでしょうか?メイドの私なんかが……しかも、殿方でも無いのに……」

「いいのいいの。ほら、楽しみましょ」


ソフィアは平民だけれど、前テオとダンスパーティーに出た時に頑張って覚えたのか、拙かったけどしっかりと踊れていて関心する。


「今度、女子会でもしましょうね」

「えっ……は、はい……!」


この世界では……恋愛エンド目的に作られた女主人公の物語だからか、女の子の主要キャラが少ない。


そんな中で、聖女とも言えるような優しい心の女の子はかなり癒しになる。


でも良かった。ケーナが女同士のドロドロを書く趣味じゃなくて……。


あんな生活しておいて、攻撃されるのはあんまり得意じゃなかったから。

そして……攻撃してくるのはいつも同性ばかり。


そりゃ勿論、女の子もモノにしたりしてたけど、根本的に無理な人はとことん無理だったから、分かりずらくて大変。


「私達、仲良く出来ると思う?」

「も、もちろんです……!」

「ふふ。……じゃあ、敬語を無くしてみることから初めよっか?」

「ええ?!……が、頑張ります……」


大きな課題を課して、ソフィアとのダンスが終わる。


「わっ、」

「今度は俺ね」


すると、今度は狂犬トウヤに背後から手を取られる。


「お嬢様、俺について来れるかな?」

「貴方、ダンスなんて出来るの?」

「心外だなぁ……できますよ……っと!」


トウヤのダンスは……なんと言うか、ハチャメチャだった。


ダンスのダの字も無い、基礎も何もなってない……ただ乱暴に振り回されて、ぐるぐる回るダンスではない『何か』。


「あぁ……もう!」


私も負けじと着いていくと、トウヤは可笑しそうに私を引いて会場中をはしゃぎ回った。


そういえば、取りに行こうと思っていたトウヤの薬になる薬草は……この前ケーナが一本だけ取りに行ってくれた。


ただ、ここで育てるにはもう少し必要で、その為にもう一度探しに行ったらしいんだけれど……何故か一つも見当たらなかったらしい。


これはもう一悶着ありそうだけれど……そのせいで、ケーナが一行に加わるのはもう少し後になりそうだった。


「ん?」

「次僕!僕っ!!」


ハチャメチャに踊る、最早暴走車の様なそれを止めたのは、主人公系少年のルークだ。


「ルーク、踊れるの?」

「うん!」


威張るルークだったが……踊り出したのはこういう場のダンスでは無く、村の祭りの時にやる様なダンスだった。


仕方が無いので、私も見よう見まねで踊ってみる。


「姉ちゃん、こうだよ」

「こう?」


……そして、いっちょまえに指導なんかもしてくる。


ルークと言えば、あの誘拐紛いの後会ったら私が刺したのを覚えていた様で、かなり怯えていた。


が、何回か面倒を見たり遠出に連れて行ったりするうちに、いつの間にか『姉ちゃん』なんて慕われるようになったし。


「僕、村の女の子に結構モテるんだよ?」

「そうなの?良かったじゃない」

「良くないでしょー?!」


そして、そういう年頃なのか……誰よりも押しが強い。


今だって見るからに嫉妬させようとしてるし。


「ごめんごめん。……今度、皆でピクニック行こっか」

「えっ、いいの?!やったぁー!」


でも、こういう所はやっぱり年相応って感じ。


あの男が何を思ったかこの子の親をかなりやばい人にしちゃったから……ここら辺はどうしようか考え中だけど。


でもまぁ……よくあの状況でこんなにまっすぐ生きられたとは、関心するけど。


「最後は僕だね」

「……ノア」


そんな事を考えていると、最近ヤンデレ気味な幼なじみのノアが、トリを飾るべく手を伸ばした。


「真ん中の方行こう」

「……うん」


ノアのダンスは、優しく精巧な感じ。


……面白いな。

よく見てると、ダンスにその人その人の性格が如実に現れてる。


「リズ……上手だね」

「ノアが上手いからだよ」


物語の様に裏切る事無く、最初の最初から一緒に居てくれたノア。


何だかんだで一番役に立ってる気がするなぁ。


……その代わり、他の子より気をつけないと爆発してしまいそうな危険性はあるから、注意しなきゃなんだけど……。


「これからもよろしくね、ノア」

「……もちろんだよ」


ノアは最後のアレンジの様に、大きく一回転してからひざまずいて手の甲にキスをしてきた。


「あはは、見よう見まねだけど」


ノアはそう言うと、恥ずかしそうにしながらも口を離して立ち上がる。


「あっ、……音楽終わったね」

「ん、お疲れ」


そんな事をしていたら、音楽が鳴り終わった。

周りを見回すと……いつの間にか他の人が居なくなっている。


「皆はどうしたの?」

「えっ」


私が聞くと、ノアは辺りを見回す。


「おかしいな……ちょっと探してくるよ」

「ちょ……」


……わざとらしいくらいな早口な言葉と共に、一人取り残されてしまった。


こういう場合は何だっけ、何かイベント事が始まりそうだけど……


「……リズ」

「!……ケーナ」


すると、計ったかのようにケーナが現れた。


……あ、そうか。

ケーナがそうさせたのかな。


「何?私と踊りたいの?」

「あぁ……それも良いね」

「えっ、冗談……」

「……ま、良いじゃないか」


私がいつもの調子で話しかけると、何故かケーナともダンスをする事になってしまった。


「えいっ」


ケーナが掛け声と共に指を鳴らすと、事前に仕込んでいたのか音楽がまた始まる。


……やっぱり踊りたかったのか。


「……意外と上手いじゃない」

「そう?練習したんだよねー」


ケーナは思ったより上手に踊ってみせた。


「それにしても……やっぱりケーナだけ、少年漫画のキャラクターみたい」

「なっ……だって、憧れなんだもん……」

「ま、別に良いけどね」


ダンスを踊るような見た目じゃなくて少し笑ってしまうと、ケーナは拗ねる。


やっぱり、結局の所……ケーナにもかなり救われた気がするなぁ。


でも、そういえば結局ケーナは何を捧げてここに来たのか、頑なに教えてくれなかったなぁ。……いつか絶対聞き出してやろう。


「や」


そんな事を考えていると……適当な言葉と共に片手がとられて思わずびっくりしてしまう。


「あっ……!」


見ると……『お兄様』とか呼ばせていたあの男が、いつの間にかそこには居た。


「えっ、何でここに……」

「『お姉様』はしばらく外して貰おうか」


困惑するケーナに、その男はそう言ってパチンと指を鳴らす。


……すると、ケーナは途端に消えてしまった。


「ちょ、ケーナは?!」

「大丈夫。しばらく外して貰うだけって言ったでしょ?」


私は焦ったものの……一応味方ではあるので、余計な危害は加えないだろうと一旦落ち着く。


「俺とも一曲、どう?」

「はぁ……?貴方、私の事何とも思ってないでしょ?」

「……だから、踊ったら何か思うかもって」


適当な言葉に付き合わされ、仕方なく私はこの男と踊る。


正直、踊りは下手。

これくらいならいっそトウヤの様に振り切った方がまだ面白げがあるくらい。


「……ねぇ、あんた名前は?」

「え?『お兄様』」

「それ、ケーナへの前に私への当てつけ?」


『お兄ちゃん』


昔そう呼んでいた自分を思い出して、吐き気がしそうになる。


そう……私はこいつの本名を知らない。

そう呼べって言われてたから。


「とにかく、それは無理だから」


それが気に入らなくなってからは、一回もこの男の名前を呼びたく無かったし、モノにしたつもりになってからは当てつけで妹様なんて呼ばせてた時もあったけど。


「そう言われてもなぁ……」

「良いから、考えといて」

「はぁい」


私は突き放す様にダンスを終え、そのまま他の皆を探そうかとその場を後にする。


……すると、


「あ、姉ちゃん!」


扉を開けた先で、ルークに出くわした。


「ちょうど良かった。……こっち来て」

「えっ……ちょっと!」


困惑しているうちにルークに引っ張られる。


「何?一体……」

「えへへ……姉ちゃん、こっちこっち」


ルークに引かれながら部屋を出て庭の方に進むと、そこには……


「「「「「リズ、お誕生日おめでとう!!!」」」」」


そう言って笑いかけてくる、皆の姿があった。


「え……えぇ……?」


思わず混乱してしまう。

誕生日?そんなもの物語にあった?


『リズ、楽しみなよ』


そんな事を思っていたら、ケーナの声がした。


……ケーナが書き足したんだ。


もう……。


「……ありがとう」


私は思わず素直に微笑んでしまう。


それに……


……ちょっと今のでドキッとしてしまったのは、絶対に……誰にも内緒だから。


















―――






賢いヒロインコンテスト用なので、一旦完結します。

落ちたら間に合いそうなコンテストか賞かに、加筆して応募しようと思っています!


ここまで読んで下さった方、ありがとうございました!!


良かったら評価の方頂けるととても励みになります…!


他の作品も、もし良かったら読んでみてください(*´∀`*)


ありがとうございました!

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悪女な詐欺師が悪役令嬢に転生(?)したので、『完結』目指して何もかも支配してやろうと思います ~世界の頂点で高笑いして何が悪い?~ センセイ @rei-000

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