爆破予告

口羽龍

爆破予告

 ある朝、ここは東京都23区内にある中学校。今日は水曜日だ。まだ登校時間ではなく、教員は誰も来ていない。いるのは宿直だけだ。


 突然、電話が鳴った。宿直は飛び起きた。宿直は眠たい目をこすっている。早朝から何だろう。緊急事態だろうか?


「もしもし」

「この学校に爆弾を仕掛けた。爆破したくなければ、休校にしろ」


 男の声は濁っている。一体、誰の声だろう。


 宿直は驚いた。爆破予告だ。生徒が登校する前に、校長に知らせないと。そして、連絡網を使って先生に知らせないと。


「もしもし! もしもし!」


 電話は切れた。すぐに宿直は校長先生に電話をかけた。


 その頃、校長先生は自宅で寝ていた。まるで何事もなさそうに思っているようだ。


 突然、電話が鳴った。こんなに朝早くに、何だろう。校長は電話を取った。


「どうしたんだ?」

「爆破予告の電話がかかってきた。爆破したくなければ、休校にしろと」


 校長は驚いた。まさか、爆破予告があったとは。これは大変だ。連絡網を使って先生に伝えないと。そして、警察を呼ばないと。


「そんな・・・」

「とにかく、休校にして学校中を調べろ」


 校長は焦っている。爆発が起きて中学校の関係者が犠牲になるのは御免だ。何としても阻止しなければ。


「はい」


 電話が切れた。校長は呆然となった。まさか、自分が校長を務める中学校で爆破予告があるとは。何としても生徒を守らないと。そのためには休校にしないと。




 中学校は朝から騒然となっている。警察が行き交い、周りには何台ものパトカーが停まっている。辺りには、ヤジがたくさんいる。まさか、こんな事になるとは。誰もが呆然としている。


 警察は学校中を調べている。宿直は安全のため、中学校の外にいる。突然、爆弾が爆発したら、大変だ。


 だが、爆弾は見つからなかった。あの電話は、嘘だったようだ。宿直や、来ていた校長は拳を握り締めた。誰がこんないたずら電話をしたんだろう。


「先生、見つかりませんでした」

「嘘だったみたいだな」


 やって来た校長はため息をついた。とんだいたずら電話だ。今すぐ生徒たちを登校させよう。


「くそっ・・・。登校させるぞ」


 校長は連絡網を使って先生に知らせ始めた。校長は怒りに満ちていた。どうして、何のために、爆破予告をしたんだろう。


 それからしばらくすると、生徒が入ってきた。だが、生徒は周りを警戒しているようだ。脅迫電話の犯人が襲い掛かって来るんじゃないだろうか? そして、殺されるんじゃないだろうか?


「うーん、何だったんだろうね」


 だが、その中には登校できた喜びで気分のいい生徒もいる。なかなか登校できなかった彼らはどんな気持ちだったんだろうか?


「でも、登校できてよかった」


 その様子を、校長は幸せそうに見ている。今朝、爆破予告があって、本当に登校していいんだろうかと思った。少し遅れたけど、登校できた事だけでも嬉しい。


「よかったですね」

「ああ」


 生徒が登校する様子を、校長は厳しい目で見ている。一体誰が、何のために爆破予告をしたんだろう。しかも、爆弾を仕掛けたというのは嘘のようだ。


 その頃、この中学校に通う島内昌幸(しまうちまさゆき)の自宅では、昌幸の母、瑞樹(みずき)がいる。瑞樹は家事をしていた。息子を送り出し、父は仕事に出かけ、家にいるのは瑞穂だけだ。とても静かな、いつもの朝だ。


 だが、今さっきまでは違っていた。中学校で爆破予告があり、登校が遅れた。昌幸はいつも通り登校したが、不安が募る。中学校に誰かが襲い掛かってこないだろうか?


 辺りの住宅街は、とても静かだ。人通りが少ない。朝の騒然とした時間がまるで嘘のようだ。いつも通りの平穏な日々が続いていくように見えた。


 突然、爆発音が聞こえた。周囲の人が見ると、家ががれきになっている。


 その頃、職員室には教員や教頭がいた。少し遅れたが、これから授業が始まる。しっかりと準備して、今日最初の授業に向かおう。


 突然、電話が鳴った。何だろう。授業に向かう予定だった江藤は電話を取った。


「はい」

「島内昌幸くんの家が、爆破されたの。昌幸くんのお母さんが行方不明なの」


 江藤は驚いた。まさか、あの爆破予告は注意の矛先をそらすための嘘だったんだろうか?


「そんな・・・」


 その横には、校長がいる。校長はたまたま職員室に来ていた。何があったんだろう。校長は心配そうな表情だ。


「どうした?」

「昌幸君の家が、爆破されたらしいの」


 校長は驚いた。ここで爆発が起こったとは。話が違うじゃないか! 中学校で爆破予告があったと思えば、本当は昌幸の家で爆破があったとは。


「じゃあ、今朝の爆破予告は昌幸君の家の爆破予告だった?」


 江藤は信じられない様子だ。ほっとしたと思ったら、ここで爆発があるとは。今日ほど気が抜けない日はない。


「いや、それは違うだろう。だけど、関連があるかもしれない」


 校長は今朝の出来事に無関係だと思った。だが、ここの生徒と聞いたら、今朝の爆破予告に関連があるのではと思った。


「いずれにしろ、誰がやったんだろう」

「そうだね」


 江藤は首をかしげた。一体誰が、何のためにこんな爆破予告を仕掛けたんだろう。中学校に恨みがある男の犯行だろうか?




 その夜、警察は近くの防犯カメラを調べていた。島内家の近くには防犯カメラがある。そこに残っている映像を見れば、何かがわかるかもしれない。テレビには、近くの映像が映っている。人度おいが少ない、閑静な住宅街。いつものように夜は過ぎていくと思った。


 と、防犯カメラに誰かの映像が映っている。それを見た江藤は反応した。その男を知っているようだ。


「こいつ、誰だ?」

「三村康之(みむらやすゆき)くんのお父さん?」


 校長は驚いた。そこにいるのは、ここに通っている康之の父だ。康之の父は、周りを気にしている。明らかに様子がおかしい。何かを仕掛けようとしているようだ。


 康之の父は島内家に入った。康之の父は右手に何かを持っている。警察がよく見ると、それは時限爆弾のようだ。まさか、この人が仕掛けたんだろうか?


 と、康之の父はすぐに島内家を出て行った。出てきた康之の父は時限爆弾を持っていない。彼が仕掛けたと思われる。


「何かを仕掛けた!」

「こいつがやったのか?」


 この男が仕掛けた可能性が高い、明日、この男に聞いてみよう。もし、こいつが犯人なら、逮捕しよう。


「聞いてみよう」


 明日、康之の父に聞いてみよう。何か、重要な事がわかるかもしれない。もし、彼が容疑を認めたのなら、直ちに捕まえないと。




 次の朝、三村家は騒然としていた。周りには警察がいる。周りにはヤジが集まってきている。昨日の中学校に続き、今度はここか。物騒な世の中だなと思い始める人も出てきた。


 警察は玄関の扉を叩いた。その声に反応して、康之の父は起きた。康之や康之の母も起きた。朝から何だろう。


 康之の父は玄関の扉を開けた。そこには警察がいる。康之の父は首をかしげた。一体何だろう。


「おはようございます」

「はい?」


 康之の父は何も知らないかのような表情だ。おとといの夜は何もしていないようなふりをしている。本当は爆弾を仕掛けたにもかかわらず。


「三村康之くんのお父さんですか?」

「はい」


 康之の父は素直に答えた。間違いなく、私は三村康之の父だ。だが、それで何の用だ。


「爆破事件の事で、聞きたいことがあるんですが」

「あ・・・」


 それを聞いて、康之の父はハッとなった。おとといの夜、時限爆弾を仕掛けたのは、私だ。それが、ばれてしまったようだ。もう逃げられない。


「どうしたんですか?」

「わ、私が・・・、やりました・・・」


 康之の父は泣いている。本当はしたくなかったのに、康之のいじめが原因で中学校が許せなくなった。中学校なんか、なくなればいいと思った。


 そこに、康之の康之の母がやって来た。行った、何事だろう。警察が来ている。


「お父さん、どうしたの?」

「ごめんな康之。お父さん、悪い事しちゃった」


 康之は驚いた。まさか、父が悪い事をしたなんて。優しいお父さんが、そんな事をするわけがない。嘘だと言ってくれ。夢だと言ってくれ。


「そんな・・・、お父さん! お父さん!」


 康之は泣きながらパトカーを見送っている。まさか、父があんなことをするとは。信じられない。康之の康之の母は、立ち去るパトカーをじっと見つめていた。

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