第10話 魔力切れ
俺が治癒スキルを連続使用出来なかった理由は単純――魔力切れが原因だ。
高レベルの治癒スキルは消費する魔力も少ないが、しかし俺自身はレベル1の人間だ。
こればっかりは残念ながら、女神サマの言う通り魔族を倒し、レベルを上げなければ魔力の最大量も増えなさそうだった。
まあ魔力効率スキルなんてものもあるにはあるのだが…Ⅱ型なので取り敢えず今は取得しないでいる。
魔力の使用が、今後常態化するかどうかも不明だからな。
という訳ですっからかんの魔力を回復するため、俺は一度天野邸を離れ、その足でまた街を散策していた。
今回は、前回の『カモ』を見つける為の散策とは別の目的がある。
「…まあ、『魔族』なんてもの見つかる訳無いよな」
俺は現在、魔力感知スキルを使用し…まあまずいないであろう『魔力を持つ存在』を探していた。
魔族という名前を持つなら魔力を持っているのだろう――という安易な考えである。
魔力感知スキル――Ⅰ型スキル。本来この世界の人間である人間は俺を含め魔力なんて感知できないが、転移する予定だった世界では多くの人間が感知できる、一般的な感覚の一つだったようだ。
それ故に、スキルとしてはⅠ型。という訳で、この世界の住人である俺にとっては比較的コスパの良いスキルだと思って取得した――のだが。
「しっかし、何も感じない」
当然と言えば当然なのだが、この世界には魔力が存在しない。それ故に魔力感知スキルも一切反応が無かった。
「そんな都合よくこの世界に魔族的な存在がいたりはしないか…」
往来ですれ違う人間全員をしっかり観察しても、魔力らしきものは一切感じられない。完全な空振りだった。
さてどうしようか、何も見つからないし――そろそろ帰ろうか、と思っていたところで。
誰かに肩を叩かれる。
「?」
はて、誰かな、知り合いかな。
実家から遠い大学に入って友達もロクに作っていない俺に知り合いなんてまずいない筈だが――と思いつつ振り返ってみると。
「こんにちは、ちょっとお話良いかな?」
そこには、この国の治安を守るお巡りさん2人がニコニコ顔でいらっしゃった。
「………はい、勿論ダイジョウブです」
…いけない、魔力を感知するのに夢中になってしまっていたようだ。
俺からすれば人から魔力を感じ取ろうとしていただけだが、周りからすればすれ違う人全員を睨みつける不審者だったのだろう。
「ちょっとだけ話を聞かせてね。身分証か何か、あるかな」
…残念ながら、俺は財布も何も持っていない身だ。
「いえ、今は持ってないです」
「結構遅い時間だけど、何してたの?」
「ちょっと散歩を」
実際やっていることは散歩に違いないのだが――かなり怪しい人間であるのは間違いなかった。
――その後、どこ住み?的なことを聞かれつつ身体検査をされ、解放されたのは10分後だった。
「…まあ、こんな遅い時間だし、出歩くのも程々にね」
「はい、そろそろ帰ります」
夜間に出歩くとこういった形でお巡りさんのお世話になるよな――と反省しつつ、解放された俺は家の方向へ踵を返す。
――10歩ほど歩いた所で、ある事を思い出す。
そういえば、驚いてお巡りさんの魔力は視れてなかったな。
俺は振り返り、魔力感知スキルを発動した。
お巡りさんの全身は真っ黒だ――他の人と変わらない。
だが、腰の部分だけ、僅かに違和感があった。
お巡りさんが持つ警棒――そこに僅かに、しかし確かに、魔力の残滓を感じ取ることが出来た。
異世界転移ボーナスでチートを手に入れたので、現代日本で新興宗教の教祖になります CoGLOFT @CoGLOFT
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