第9話 回復

治癒スキルでちまちまと全身を回復させつつ、俺はこのスキルの使い方について考えていた。


――通常の治癒スキルであれば、全身を一気に治してしまうことも可能。しかしその時全身眩く発光してしまう訳だが――それはそれで良いのでは?

神々しく発光しながら立ちどころに病が!というのは少し『やりすぎ』感があるかなと思い今回はちょびちょびと治していっているが、これはこれで『手を翳した場所が何故か治っていく』という怪しさがある。

もう開き直ってしまって、謎パワーで光っている!すごい!治った!という風にしてしまっても良いのではないか…


…うん、次からは光らせようか。


そうこう考えつつ手を動かしていると、治癒している箇所は胴体へと移る。


「…触らないでよ」


「今までと変わらずこの距離で大丈夫ですよ」


実際の所、そこまで隆起がある訳ではないので触れる危険性は皆無だった。


「これ、何してるの?…痒みは確かに引いてるけど」


天野さんの疑問はもっともなので、俺は事前に用意していた回答を返す。


「病の原因に直接作用する特殊な技です。ただ手を翳しているだけに見えるかもしれませんが、病を解析し、解毒をしています」


中々怪しい話だが、実際よくある宗教の類もこんなものだろう。

悪目立ちこそすれ、まあそんなものか???と納得(?)してもらえるはずだ。


「怪し…いえ、なんでもないわ」


…流石に現在進行形で病が治っているのに『怪しい』呼ばわりはまずいと思ったのだろうか。


「まあ、怪しいと思っていただいて構いません――あまり世に出ている技ではないですし、多くの人に知られても困りますから」


そんな門外不出の技発言をしつつ…胴体も終わり、最後に顔に手を翳す。


「目を瞑っていただいても?」


調至近距離でスキルの発動を見られると何があるか分からないので、一応目を瞑ってもらう。


10秒足らずで治癒が完了。


「さて、次は背中側ですが…」


「身体は別に自分で動かせるから、ちょっと待ってて」


そう言って身体を起こそうとする天野さん。だが…


「いえ、すみませんが明後日でも良いでしょうか?」


俺の発言に怪訝な顔をしている天野さん。

しかし実際これ以上の治癒スキルの使用は出来ないので、日を改める必要があった。


「…少し、疲れてしまいまして」





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