第66話 紅羽先輩、本気で怒ってますね
俺は今、おそらく人生の中でも指折りに心臓の鼓動を強めている。
ベッドでするようなことって…そういう、ことだよな。
「あ…で、でも!もちろん!新くんが嫌だったら無理強いはしないから、本当!でも新くんがしたいって思ってくれたなら…ね」
紅羽先輩は俺のネクタイから手を離すと、手を自分の膝の上に置いた。
…本当に、俺に判断を委ねるということなんだろう。
…俺は高校二年生の今日の誕生日で十七歳、紅羽先輩は大学二年生の二十歳。
俺たちは恋人で、お互いに合意をしてなら何も問題は無い…が。
「…紅羽、先輩」
「ん、何かな?」
「…失礼なことっていうのはわかってるんですけど、聞かせてください、紅羽先輩はもうそういう経験ってあったりするんですか?」
「え、え!?な、無いよ無いよ!何回か言ってるけど、私は新くん以外に恋人も居たことが無ければ、新くん以外の男の子を家に上げたことすら無いんだから!それとも、私が外で遊んでるように見える?」
「ご、ごめんなさい!そんなつもりで聞いたんじゃ…」
「あはは、冗談!わかってるよー」
紅羽先輩は俺が緊張していることを汲み取ってなのかはわからないが、場を明るくしてくれた。
…だが、今はそれに甘えていてはいけない。
「その…初めての相手が、俺で良いんですか?」
「…新くん、私、今まで新くんに本気で怒ったりしたこともないし、そもそも本気で怒ろうなんて思ったことも無いけど、二つだけ新くんがしたら本気で怒るって決めてることがあるの」
「え…?」
二つ…紅羽先輩が本気で怒ること?
「一つは浮気、もし新くんがそんなことしたらそれでも私は新くんのことが好きだと思うから別れはしないけど、怒るだけじゃなくてそれ相応の対応を取らせてもらうよ」
「浮気なんてしませんよ」
それについてだけは絶対の確信を持って言える。
たとえこれから何が起こっても、俺は浮気なんてしない。
「そう言ってくれて嬉しいよ!…それで、あと一つは────新くんが私の気持ちを勝手に分析して、それで自分の自虐をするとき」
それは…形は少し違うが、それでもニュアンス的にはついさっきの俺のことだ。
「もちろん、普段私の気持ちを考えてくれて、それこそどんなことしたら喜ぶかなってこと考えてくれたりするのは嬉しいよ?それが例え当たってたとしても外れてたとしても、私は新くんが私の気持ちを考えてくれたってだけで嬉しいから…でもね、それで勝手にマイナスな想像をして、それで自分のことを下げてるのは本当に許せないの、私はこんなに新くんのこと大好きなのにって」
「す、すみません…」
「新くん、私が聞いてるのは一つだよ、新くんは私とそういうこと、したい?したくない?ただそれだけ」
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