第67話 紅羽先輩、温かいです

 俺の答えは、一つしかない。


「もちろん…したい、です」


「うん、私も…じゃあ新くん、今から早速────あ!」


「ど、どうしましたか!?」


 俺は雰囲気を壊すほどの紅羽先輩の声で思わず動揺してしまった。

 …紅羽先輩も紅羽先輩で、こんな時にどうしたんだ?


「見てみて新くん!雪だよ!」


「え…?」


 紅羽先輩のいう通り、ベランダ越しに雪が降っているのが見える。

 クリスマスは降ってなかったけど、その代わりに俺の誕生日に降るっていうのは…それはそれで、なんだかロマンを感じるな。


「クリスマスは雪降ってなかったけど、新くんの誕生日には降ってくれるなんて、神様も新くんのことをお祝いしてるんだね」


「それ、俺も今似たようなこと思ってました」


「え、本当!?嬉しい!」


 そう言いながら紅羽先輩はベランダの方に行くと、ベランダを開けた。


「うわぁ、寒いね〜」


「そうですね」


 元々12月30日というだけで、俺の誕生日はいつも寒い記憶しかないのに、今日は雪まで降っていて、きっと例年よりも寒いんだろう。


「でも雪は綺麗だね〜」


「はい、そうですね」


「…本当に、寒くなってきたね」


 紅羽先輩はベランダを閉めると、今度は俺が座っているベッドの方に戻ってきた。


「…新くん、寒い時は、体を寄せ合って、温まらないとね」


「…そうですね」


 俺たちは体を抱きしめ合った。


「…新くん、まだ寒いね」


「そう…ですね」


「じゃあ、もっと、一緒に温まらないとね」


 …俺たちは。

 雪が降っている下で体を重ねて…互いの温もりを知った。

 いつも俺の誕生日は寒いのに、今年の誕生日は…とても、温かかった。

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