第64話 紅羽先輩、付いて行きます

 クリスマスから早くも二日が経ち、三日後には俺の誕生日が控えていた。


「よし」


 俺は昨日の夜に、俺がクリスマスの日映画を観ながら寝てしまったせいで渡せなかったらしいクリスマスプレゼントを受け取っており、その内容は俺が紅羽先輩に誕生日の時に渡したイヤリングの色違いだった。

 …紅羽先輩にあのイヤリングの正式名称なんて教えていないのに、きっと頑張って探してくれたんだろう。

 俺はもちろんそのイヤリングを付けて、バイト先であるカフェの前に着くと、そこには紅羽先輩が立っていた。


「あ!新くん!今日も学校お疲れ様〜」


「紅羽先輩も、大学お疲れ様です」


「…あ!私がプレゼントしたイヤリング!付けてくれてるんだ〜!嬉しいな〜!」


「もちろんです、紅羽先輩の方こそ俺が紅羽先輩の誕生日にプレゼントしたイヤリングつけてくれてるんですね」


「もちろんだよ!私たち色違いのお揃いを付けてるんだよ〜!シミラールックだね〜」


 シミラー…ルック?

 …きっと最近出た言葉なんだろうことはわかるが、知らない言葉だ。


「ぺ、ペアルックみたいな感じってことですか?」


「そうそう!そういうこと〜」


 俺は自分の中でしっかりとその意味を理解した。

 少しの間話を弾ませていると、紅羽先輩が突然神妙な面持ちになっていた。


「…紅羽先輩?」


「…新くん、ちょっとだけ真面目なお話しても良いかな?」


「はい、大丈夫ですよ」


 俺がそう返答すると紅羽先輩は一瞬だけ笑顔を見せ、すぐに真面目な顔になった。


「…私ね、新くんともっと色々なことを経験したいの」


「はい、俺もです」


「それでね、前も言ったと思うけど、このバイト辞めて、もっと新くんと色々な事一緒にできたら楽しいなって思うんだけど…どう、かな?」


 紅羽先輩が俺の様子を窺うような口調で聞いてきた。

 …いきなり真面目な話なんていうからどんな話かと思えば。


「紅羽先輩も、俺のことまだまだわかってないじゃ無いですか」


 俺は観覧車の中で言われたことを、今度は俺が紅羽先輩に言った。


「今の俺はもう、バイトがしたいんじゃなくて、紅羽先輩と一緒に居たいからバイトしてるんです…だから、もちろんどこまでも紅羽先輩に付いて行きます」


「新くん…!」


 紅羽先輩はその感情を表現するためになのか、それとも外とはわかっていても感情が抑えきれなかったのか、俺のことを抱きしめてきた。

 ────その直後、お客さんが来たため、俺たちはすぐに離れた。


「あ、新くん!じゃあ、バイト、頑張ろっか…!」


「は、はい…!そうですね…!」


 俺たちは店内に入り、今日もいつものように楽しく紅羽先輩と一緒にバイトに励んだ。

 そして三日後…遂に、俺の誕生日がやって来た。

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