第63話 紅羽先輩、俺可愛くないです
俺はゆっくりと目を開く。
視界に映ったのは、見慣れない天井。
だが、俺はなんとなくその天井を眺め続ける、まだ意識が覚醒しきっていない。
「…ん?」
見慣れない天井…?
どうして見慣れない天井がある場所で俺は眠ってたんだ?
そんな疑問から始まり、少しずつ意識が覚醒してきた俺は、なんとなく体を起こしてみた。
「…え?」
ここは…見間違えるはずもない、紅羽先輩の部屋。
…そうだ、昨日は確か映画を見ながら一回寝たけどしばらくして起きて、紅羽先輩に言われるがままに寝ぼけながら紅羽先輩の家のお風呂を借りて。
その後は紅羽先輩が買っておいてくれたらしい俺のお泊まり用の寝巻きを一式着て紅羽先輩に背中を押されるがままに紅羽先輩の部屋に入って。
…電気を消して、一緒のベッドで寝たんだ。
「…え、一緒のベッド!?」
俺は自分の記憶を確かめるために思わず隣を見る。
…が。
「なんだ、一緒には寝てないな」
それは俺が寝ぼけていたが故の記憶違いだったようで、ひとまず安心する。
…俺と紅羽先輩は恋人なため、一緒に寝ていても何も問題が無いと言えば問題は無いが、その記憶が寝ぼけてて曖昧というのはあまり良くないことだ。
「…ていうか俺!昨日映画見ながら紅羽先輩の横で寝たのか…それってめっちゃ恥ずかしくないか!?」
「恥ずかしくないよ、ちゃんと私に寄りかかってて可愛かったから」
「────あれ、紅羽先輩!?」
ベッドの上に紅羽先輩は居なかったが、床にあるテーブル前に紅羽先輩は座っていた。
そして俺のことを微笑ましい顔で見ていた。
「さっき一緒には寝てないって言ってたけど、今日新くんと私はその私のベッドで一緒に寝たの」
「そ、そう…だったんですか」
初めて一緒のベッドで寝たのに、寝ぼけててあんまり覚えてないなんてことは絶対に言えない。
「その様子だと、あんまり覚えてなさそうだね」
一瞬でバレてしまった。
「…本当すみません」
俺はただただ謝ることしかできない。
全く覚えていないわけではなく、少しだけ覚えているというのがまたなんとも歯痒いところだ。
「いいよいいよ!でも昨日の新くんすっごい可愛かったよ?」
「え…?」
「私の言うこと全部聞いてくれて、返事が全部『うん…』だったの!いつもなら『はい』なのに寝ぼけてたからだと思うけど『うん…』だったの!そのギャップと新くんが隣で寝てるって言うので私昨日全然寝れなかったよ〜!」
「……」
全然覚えてない…俺の知らないところで俺のギャップが見出されている…
俺は殻に籠るようにして、自分に布団を覆い被せた。
…よくよく意識してみると、紅羽先輩の匂いがする。
…変態か俺は!
俺は体を勢いよく起こした。
「…新くん、朝から可愛いね」
「や、やめてくださいよ…!俺可愛くないですから!」
その後俺は紅羽先輩と一緒に朝ごはんを食べさせてもらい、昨日のことについてたくさん話したりして…その後、家に帰った。
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