第49話 紅羽先輩、楽しみです
「新くん、あとちょっとでクリスマスだね」
「そうですね」
あとちょっとと言っても12月もまだ上旬でそれなりに時間はある。
それまでにクリスマスに何をしたいかとかも考えないとな。
「…私ね、この前の誕生日で20歳になったの」
「あー!本当におめでとうございます!」
紅羽先輩は大学二年生で、先月の誕生日で19歳から20歳になった。
20歳からは色々とできることも増えて、紅羽先輩には俺が見えていない景色も見えているんだろう。
「うん、ありがと!それでね?20歳になったら、お酒とかタバコとかもできるようになったりするの」
「そうですね」
「…あ!違うよ!?別に私お酒も全然、飲んでも一年に一回嗜むくらいにしようって思ってるし、タバコは吸わないから!その辺は安心して!」
「別に心配してないので!大丈夫です!…でも健康的なのは良かったです」
他の人がお酒とかタバコが好きでも別に何も思わないけど、紅羽先輩にはずっと健康に居て欲しいからそういう考え方なのは嬉しいな。
「うん!…で、良かったらなんだけど、私クリスマスに初めてワイン買ってみようと思うから、それを新くんと一緒に居る時に飲んでみても良いかな…?」
「あー!良いじゃないですか!初めてのワイン!是非一緒に居ます!」
「本当!?やったー!飲みすぎないようにはするつもりだけど最初はどのくらいの量で酔っちゃうのかとかもわからないから、新くんが近くに居てくれたら安心だなって思ってたの」
紅羽先輩が真に大人になった証でもある初ワイン、しかもクリスマスに…断る理由が全く無い。
「新くんのお誕生日はクリスマスから五日後の12月30日だよね!」
「よく覚えてますね、そうです」
「もちろん!新くんに初めて誕生日聞いた日からすぐにカレンダーに記入したよ!」
こんなに誰かに大事にされているというのは、素直に嬉しい。
「クリスマスプレゼントと誕生日プレゼント何あげよっかな〜」
「え、一緒で良いですよ!」
五日しか変わらないのにプレゼントを別々で渡すというのは色々と面倒が多そうだ…と思ったが。
「だ〜め!そういうのはちゃんと一回一回大事に祝わないと!」
「そんな…俺はプレゼントなんてなくても、紅羽先輩と一緒に居られればそれで…」
「自分はプレゼント私に持ってきて私の告白の返事の時に「俺は渡したかったので」なんて言いながら渡すなんてオシャレなことしたのに私はダメなの〜?」
「そ、それは…」
「プレゼント、クリスマスも誕生日も…渡すからね!」
紅羽先輩は笑顔で言った。
「…はい!今から楽しみにしてますね」
「うん!」
楽しそうにプレゼントを考えている紅羽先輩を見て、俺もクリスマスと俺の誕生日が楽しみになった。
「そうだ、新くんがくれたこのプレゼント、本当に嬉しいよ!」
俺が紅羽先輩に渡したプレゼント。
あの日告白されるなんて思いもしなかったが、それでも俺も深層心理のどこかでは、紅羽先輩ともっと深い関係になりたいと思っていた証のプレゼント。
「気に入ってくれたみたいで良かったです、イヤリングなんてもしかしたら引かれるかなとか思ったんですけど…ずっと俺の何かを身につけていて欲しくて、選んじゃいました」
「全然引かないよ!むしろ本当に嬉しいの!」
「それなら本当に良かったです」
俺は少し口角を上げた。
自分がプレゼントしたものでこんなにも喜んでもらえるのも、素直に嬉しい。
…本当に、紅羽先輩と居ると全てが楽しいな。
「オシャレな紅羽先輩には予想以上似合ってて驚きました」
「本当!?ありが────あ!あ!私!新くんの誕生日プレゼント決めた!」
「え!?もうですか!?」
紅羽先輩は何かに閃いたように言った。
ここで「なんですか?」なんて聞くのは野暮なためできないが、少し気になるな。
「うん!楽しみにしててね!」
「そうします!」
俺は気になるという好奇心を、紅羽先輩に言われた通り楽しみという感情に変えることにした。
…本当に、クリスマスと誕生日が楽しみだな。
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