第46話 紅羽先輩、派手すぎます
「────え、新…くん?」
いきなり抱きつかれた紅羽先輩は困惑しているようだったが、俺は紅羽先輩のことを離しはしなかった。
「どうしたの…?新くんにしては結構大胆だね」
「…すみません、怖かったりドキドキしたりで、よくわからなくなって抱きついちゃいました」
「気にしないで、新くんから積極的にしてくれて私は嬉しいから…そんなことで謝らないでよ、私たちもう恋人なんだからね!」
暗いからよくはわからないが、おそらく紅羽先輩は今顔を赤くしているんだろうことが容易に想像できた。
「はい…!」
「…そうだ新くん、せっかく恋人にもなったんだし、そろそろ私のこと呼び捨てで呼ぶとかタメ口で話すとかしてみない?その方が距離も近い感じがして良いと思うの」
紅羽先輩は三連休旅行の二日目の夜、俺が紅羽先輩に対して呼び捨てやタメ口をするという妄想をしてから、たまにこんなことを言うようになった。
…ハッキリ言ってこの部分に関してはどうかしていると思う。
「…もし本当にただただ呼び捨てとかタメ口で話して、距離を近くしたいって紅羽先輩が考えてるなら俺も紅羽先輩に言われた通りにしてたかもしれません」
「だったら────」
「でも!紅羽先輩のそれはなんか変な罵倒されたい願望が入ってるじゃないですか!前の旅行の時の夜その妄想が広がって俺がなかなか寝付けなかったこと覚えてますからね!」
「あ!そんなこと言うんだ!なら私だって旅行観光してる時新くんが私と手繋いでめっちゃドキドキしてたこと知ってるもんね!」
「あ、あれは仕方ないじゃ無いですか!…そ、それより!後ろに人が来たら迷惑ですし、進みましょう!」
俺は他の人の迷惑になるかもしれないと考え紅羽先輩よりも前に出たのだが、その十秒後、目の前にこの世のものとは思えないほど怖いぬいぐるみのようなものが出てきて俺は大声をあげた。
紅羽先輩はそれを隣で見て笑っている。
…屈辱的だ。
俺たちはようやくお化け屋敷の出口の光が見えるところまで来た。
「ようやく…出られますね」
「そうだね…新くん、ちょっと良いかな?」
「はい、なんで────す…か…?」
お化け屋敷の出口の光が見えるということは、当然紅羽先輩の顔なんかもしっかりと見える。
そしてその紅羽先輩が今俺にしたことは…
「え…紅羽、先輩?」
「…次は!唇だからね!」
紅羽先輩は元気にそう言うと、俺よりも先にお化け屋敷から出てしまった。
「ちょっ、紅羽先輩!?今のはいきなりすぎませんか!?」
「せっかく新くんが勇気出してくれたのに、返さないわけにもいかないでしょー?」
「返し方が派手すぎますって!」
紅羽先輩は…俺の頬に一瞬だけキスと呼ばれるものをしても、いつもと変わらない様子だった。
…が、いつも紅羽先輩と一緒に居る俺には、紅羽先輩も少し照れ隠しをしているんだろうということがわかった。
…こうして、次の日も紅羽先輩とより文化祭を楽しみ、高校二年の文化祭は終わった。
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