第45話 紅羽先輩、お化け屋敷です
「みんなお疲れ様〜!」
執事喫茶が閉店した後も、まだ少しだけ文化祭は続いていた。
メイド・執事喫茶はかなり好評で、もしかすると学校全体で見ても売り上げ一位になることができるかもしれないということだった。
「いや〜!天城くんに明日真くんお疲れ様!やっぱり二人には入り口の方に居てもらって正解だったね〜」
女子生徒は俺と明日真にお疲れ様を告げると、次に他の生徒たちにも話しかけに行った。
…クラスの中心人物なだけあって、本当に色々と心配りをしているみたいだ。
「天城くん、お疲れ様、特に途中は何か陽織さんと紫雨さんがもめたりしてて大変だったみたいだね」
「あぁ…でも特に大きなことにならなくて安心した」
なんてことを互いに話し合っていると、執事喫茶を出てからもずっと俺のことをジェスチャーなどで応援してくれていた紅羽先輩が教室の中に入ってきて俺たちのところに来た。
「お疲れ様!新くん!」
「紅羽先輩こそ、ずっと見ててくれてありがとうございます」
「あ、陽織さん、天城くんと恋人になれたみたいで、おめでとうございます」
「え…そんな!あ、ありがと…!」
紅羽先輩は照れている。
…さっき自分であんな公然の場で、それも大声で言ったことを忘れているんだろうか。
「まだ文化祭は終わって無いけど、これから二人でどこか回ったりする予定があったりするのかな?」
「あぁ、まだ時間あるしちょっとだけ見て回ろうと思う」
「そう、楽しんでね」
明日真は俺たちに笑顔を向けると、空気を読んでくれたのか足早に俺たちの元から去っていった。
俺たちはそれに合わせて教室の外に出て歩きながら話すことにした。
「気遣いもできて良い子だね、明日真くん…誰かと違ってちゃんと私の心にも気づいてくれるしね」
「それは本当に申し訳ありませんでしたって…」
「冗談!最終的には私の想いを受け取ってくれたんだし…ありがとね」
「お礼を言われるようなことじゃ無いです、こちらこそありがとうございます」
俺たちは少しの間だけ楽しい話をしていると、気になる所を見つけた。
「紅羽先輩、お化け屋敷があるみたいです」
「新くんホラー苦手じゃなかった?」
「苦手…ですけど、紅羽先輩は好きでしたよね?」
「うん」
「…だったら、行きましょう!一緒に!」
「え、本当に!?良いの!?」
紅羽先輩はとても嬉しそうな顔を見せてくれた。
…その顔が見れただけで、俺がお化け屋敷に行く理由としては十分だ。
「はい!」
「やったー!せっかくだし、手も繋いじゃおっか!」
紅羽先輩は俺の手を繋ぐと、お化け屋敷の入り口に入った。
お化け屋敷の中はとにかく暗く、かろうじて進行方向がわかるくらいの感じだった。
紅羽先輩が怖い物なんて無いと言うように迷いなく先導してくれる。
そして…
「新くん、大丈夫そうかな?」
「は、はい、大丈夫です」
時々気遣ってくれたりもする。
それから、三つほど驚かされるポイントを通過して、俺は人生で初めて…吊り橋効果というものを感じていることに気がついた。
恋のドキドキと本当の恐怖が混ざってしまって恋のドキドキのように感じるという現象だ。
いつものことではあるが、今はより紅羽先輩がかっこよく、頼もしく見えて…
「紅羽先輩」
「ん、どうし────」
俺は恐怖からなのか、はたまた恋愛感情でなのかはわからないが。
紅羽先輩に後ろから抱きついた。
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