第41話 紅羽先輩、文化祭です
「新くん！ここメイド・執事喫茶って書いてあるし、多分新くんのクラスだよね？」
「そう…ですけど、どうして紅羽先輩が今この文化祭に居るんですか？」
紅羽先輩が文化祭に来るのはこの一日目じゃなくて、二日目だったはずだ。
「新くんこそ！どうして私のこと呼んでくれなかったの！聞いた感じ今日が一日目で明日が二日目なんだよね？」
「そ、それは…一日目よりも二日目の方が紅羽先輩にかっこいいところ見せられるかなって…」
俺が顔を逸らしながら言うと、紅羽先輩が人目も気にせずに抱きついてきた。
「も〜！可愛すぎるよ〜！でも私は初々しい新くんも見たいんだから！」
「ちょ…先輩、こんなところで…」
「良いの！新くんが私のだっていうことも周りの子達に教えといてあげないといけないからね〜」
その理由もあるとは思うが、俺には単純に抱きつきたいだけのように見える。
「わ、わかりましたけど、そろそろ俺行かないといけないんです」
「え！ちょうどこれから新くんの執事服見れるの！？やったー！行ってらっしゃい！いっぱい写真撮ってあげるね！」
「は…はい」
俺は少し恥ずかしがっているのを隠すために足早に俺たちのクラスの中に入った。
「天城くん、陽織さんはもう良いの？」
「あぁ」
いつの間にか先に戻っていたらしい明日真が、執事服を二着持っている。
おそらく行っちゃくは俺の分を取ってきてくれたんだろう。
「そう、こっちが天城くんのね」
明日真は持っている片方の執事服を俺に渡した。
俺たちは教室内で区切るようにカーテンがされているところに入ると、そこで執事服に着替えた。
「天城くん、似合ってるね」
「明日真こそ」
明日真のことを見てみると、執事服とそんなにマッチする男子高校生なんてこの世に存在するのかと思わせるほどに執事服と最高の相性を叩き出していた。
「そろそろ表に出とこっか」
「あぁ、そうしよう」
俺たちが同時にカーテンの外から出ると、今は休憩中でまだお客さんは誰も入っていないにも関わらず、異様な視線を感じた。
その視線は、ガラスの窓越しのお客さんの視線と、今机を揃え直したり雑巾掛けしたりしている同じクラスの人たちから浴びせられたものだった。
「なんか見られてないか？」
「執事服なんて着てたら嫌でも注目は集まっちゃうんじゃない？」
その割にはもうすでに他に数人の男子生徒が執事服を着ているのに、特に注目されている雰囲気では無い。
視線はやがって声となって返ってきた。
「きゃああああああああ！！」
「え…？」
悲鳴…のような声が、至る女子生徒から放たれた。
「ど、どうしたんだ…？」
俺が全く状況を読めないでいると、一人の女子生徒が俺たちに話しかけてきた。
「ねぇねぇ、一緒に写真撮ってよ！」
「写真…？」
「そうそう、せっかくの文化祭だから思い出にしたいなって思って」
「あぁ、そういうことなら────」
「ちょっと抜け駆けしないでよ！私が先！」
「え！？私だって！」
執事喫茶の準備中なのに、クラス中がものすごく騒がしくなってしまった。
「どうやら、僕たちの執事服姿が、女子生徒たちのお眼鏡にかなったみたいだね、全く嬉しくないけどね」
「そういうことなのか…？」
俺にではなく明日真にだと思うが、確かに言われてみれば俺に向けられている視線も少なからずある。
…というか、嬉しいと言われてもちょっと反応には困ったが全く嬉しくないって口に出して言うのもそれはそれでどうなんだ？
「でもそろそろ時間だしどうにか収拾をつけないと…」
俺がそう考えていると、教室の外から強い視線を感じたため、その視線の方に向いてみると。
「うわっ！？」
紅羽先輩が今にも何かよく無いことをしそうな目で俺のことを見つめていた。
「わ、悪い明日真、すぐ戻る！」
「…うん、わかったよ、こっちは僕に任せて」
頼もしい限りだ。
俺は教室を出て、明らかに怒っているであろう紅羽先輩と話すことにした。
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