第8話 先輩、教えてください
「あ〜!楽しかった!いっぱい新くんにサービスしてもらっちゃったね〜!新くん将来危ない接客の方に行かないか心配だな〜、もしそうなったら全力で動けないようにしてあげるね!」
表現の仕方が怖いが冗談…だよな?
俺たちはそれから少し軽く冗談めいた会話をしながら、俺は気になる疑問を投げかけた。
「先輩…やっぱりここ最近様子がおかしく無いですか?」
「おかしいって〜?」
さっき遊ばれまくったバイト終わりの帰り道、先輩と同じになったので俺は先輩に直接聞いてみることにした。
「前のバイトの時は、俺の仕事を邪魔したりとか、変な工作を入れたりなんてすることなかったじゃないですか」
「…そう、だったね」
先輩は途端に暗くなった。
先輩は俺がどのことを言っているのかはわかっているらしい。
「私は新くんに接客業の仕事をして欲しくないの、だからもし新くんの新しいバイトっていうのが接客業以外だったら私は喜んで新くんにその仕事内容について前みたいに教えてあげたと思うよ」
「…その接客業して欲しく無い理由っていうのが、女の人と話してほしく無いから、でしたっけ?」
「うん…嫌なの」
「どうしてですか…?」
前はてっきり俺が女性のことを苦手だと先輩が何かで勘違いして、その苦手なことから俺を守ってくれるためにだと思っていたが、前聞いた時は別にそういうことじゃないと言っていた。
「…今はまだ、言えないかな」
「え、なんでですか!」
「…あ〜!もう!そんなキラキラした純粋な目で聞かれたら私が悪いことしてるみたいになっちゃうじゃん!新くんそういうとこあるよねっ!」
「え…え?」
何故か怒られてしまった。
「す、すみません…」
「べつに〜〜〜?いいけどね〜〜〜」
とてもそんな風には見えない。
「…まぁ、仕方ないか、新くんまだ16歳だもんね」
「…え」
「そうだよね〜、今年で20歳になる私と比べたらまだまだ子供だし、ちょっとくらい大人らしく許してあげないとね〜」
「なんかその感じ嫌なんですけど」
「はいはい〜、そうだね〜!」
「だからなんかその感じ嫌なんですけど!」
そんなやり取りをしている間に、駅に着いた俺たちはそれぞれ別の方面なため駅で解散した。
…子供扱いしてくるのはかなり厄介だったな。
ちょうど家に着いたタイミングあたりで、先輩からメールが来た。
『…さっきは誤魔化しちゃったけど、いつかはちゃんとそれを堂々の権利として言える日が来るように私、頑張るから!』
「…はい、わかりました」
本当はあまりわかってないが、先輩の熱意だけは俺に伝わった。
そういう意味でのわかりました、だ。
「じゃあ…これで」
『うん、お疲れ様〜!』
先輩のその声を最後に、俺たちは電話を切った。
次のバイトは試験勉強の都合で一週間は先だ、先輩とも当分会うことはないのか…ちょっと寂しくはなるが、もしかするとその期間中に先輩も色々と考えを改め直してくれる可能性だってある。
それから数日後、学校にて。
「あと約半月後に中間テストがあるので、皆さん日々の勉強を怠らないように」
「みんな!勉強頑張ろ!」
「うん、わからないことがある人は放課後の勉強会に参加してね!」
周りからは勉強熱心な声が聞こえてくる。
…みんな良い人たちなのは伝わってくるんだが、まだクラスに馴染めていない俺からするとその輪に入りずらさがある。
「天城くん、よかったら今日の勉強会参加しない?」
なんて考えていると、実際に勉強会に誘われた。
…本当にありがたいことではあるが。
「誘ってくれて嬉しいけど、今日は用事があるんだ…ごめん」
俺はそれを断って、教室を出る。
…きっと感じの悪いやつというイメージが、教室に広まってしまっただろうが、それでもあのクラスの雰囲気をまだクラスに馴染めていない俺のせいで変に気を遣わせたりはしたくない。
だから俺は特に用事も無いのに、さっきのありがたい申し出を断った。
…嫌われても仕方ないな。
「…かっこいい〜!」
「ねぇねぇ、天城くんって結構アリじゃない?」
「うん、何考えてるかわからなくてミステリアスって感じ」
「だよね〜!もっとお喋りできる機会あると良いな〜」
俺は用事があると言った手前学校に残っているわけにはいかず、学校から出てとりあえず学校からちょっと離れたのカフェで一息つくことにした。
「…どうするか」
勉強は苦手すぎるほど苦手というわけではないが、お世辞にも得意とは言えない。
だから一応少しでも勉強はしておいたほうがいいが…
「一人だとやる気が出ないんだよな…」
…そうだ、先輩に勉強の面倒を見てもらえないか頼んでみよう。
先輩が勉学の方まで得意なのか詳しいことは知らないが、少なくとも大学生として今生活しているなら、高校の範囲は多少わかるはずだ。
俺は先輩に一通のメールを送る。
『先輩、勉強教えてもらいたいんですけど勉強って得意だったりしますか、得意で時間とかも空いてたら教えて欲しいです!』
すると先輩はすぐに既読をつけてすぐに返事を返してきた。
『うん!!!!!得意だよ!!!!!何時間でも教えてあげる!!!!!いつがいいかな!?』
打ち間違えかと思うくらいにビックリマークが付いている。
…今すぐ、というのは申し訳ないし。
『次の土曜日とかどうですか?』
『うん!!土曜日ね!!時間と場所はどこがいいかな?』
『時間は先輩が良ければ朝の十時くらいからで、場所は俺の家とかどうですか?静かに勉強できると思います』
いつもはすぐに返信を返してくれる先輩だが、なかなか返信が返ってこない。
「…先輩どうかしたの────か!?」
俺は自分が送った文を見返す。
「俺の家…って」
これじゃあ俺が先輩のことを俺の家に誘ってるみたいだ。
…その通りなんだけど、変な誤解をされてしまっても仕方が無い。
俺がそう思い至ったところで、誤解を解くメールを送ろうとしたが、その前にメールが来てしまった。
俺はそのメールを恐る恐る見る。
『うん!わかったよ!楽しみにしてるね!』
俺は変な空気にしないためにすぐに返事を送る。
『はい、よろしくお願いします』
ひとまずこれでメールのやり取りは終了した。
…俺はなんとなく、部屋の掃除を始めた。
「…土曜日に、新くんのお家…!胸が…破裂しそう…そうだ、その機会に新くんの女の子関連の人間関係を聞き出したりして、落ち着いたら良い雰囲気になったりして…あぁ〜!楽しみと不安がいっぱい〜!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます