第2話 先輩、異常です
「よし」
今日は新しいバイト先での初めてのバイトだ。
オシャレなカフェ初めての接客…キッチンではなくホールの仕事をするということで、かなり緊張してはいるけど。
「なんとかなってくれ」
そんなことを思いながら心臓の鼓動を早める。
…俺が初めてのバイトであの
その点にも注意しないといけない。
「…ここか」
相変わらず画像通り、ものすごくオシャレな雰囲気だ。
俺はそのドアを開け中に入る。
開店前だからまだ店内には誰も居ない。
「あ、あの!今日からバイトをすることになった
誰も居なかったため少し声を張り上げると、すぐにここの責任者なんだろう人がキッチンの方から出てきた。
「天城くん、今日からよろしくね、ここの責任者です」
「はい、よろしくお願いします!」
俺は元気よく挨拶する。
「天城くんには今日から接客のバイトをしてもらうけど、前のバイトは接客じゃなくてキッチンって話だったよね?」
「はい、接客のバイトは初めてです」
「うん、だから最初の方は接客経験が豊富な子に教えてもらいながらマンツーマンで対応してもらうよ」
「わかりました」
マンツーマン…前の陽織先輩の時と同じだ。
「担当の子呼んでくるから、ちょっと待ってて」
責任者さんはキッチンの方に戻ると、俺のことを担当してくれるという人のことを呼びに言った。
…難しいことだとは分かっていても、やはり陽織先輩のような人であって欲しいと願ってしまう。
俺の社会経験は、もう大きな部分を陽織先輩に魅入られてしまっているのかもしれない。
「…ん」
それからすぐにキッチンから責任者の人と俺のことを担当してくれるらしき人が出てきた。
「…あれ、え?」
俺は一度見間違えかと目を疑ったが、その明るい赤色の髪の毛とオレンジ色の目と綺麗な顔立ちをした人のことを俺が見間違えるわけがない。
「この子が、君のことを担当してくれる
それだけ言い残すと責任者の人はこの場を後にした。
…え?
「先輩…!?」
「他にどんな先輩が居るの〜?君の知り合いに、大学二年生で赤色の髪の毛でオレンジ色の目をしてて君に何から何まで手取り足取り教えてあげた女の子の先輩なんて私以外に居ないよね!」
先輩はウィンクをした。
アニメとかならキラキラみたいな効果音が入ってそうだ…今はそれどころじゃなくて!
「先輩がどうしてここに居るんですか!?え、前のバイトはどうしたんですか?」
「新くんが辞めたから辞めたよ、私があそこでバイトしてたのって、新くんが来てからはもう新くんだけが理由だったし」
「そんな…」
俺が辞めたっていうだけで本当にあそこのバイトを辞めたのか。
俺からしてみればもったいないどころの話じゃない。
「じゃあ先輩もこっちに引越して来たんですか?」
「そういうこと〜」
「大学は…?」
「転学したよ」
「な、なんでそこまで…?」
どう考えたって異常だ。
その背景には俺には簡単に想像できない理由があるんだろう。
と思っていた矢先、信じられない一言。
「新くんに着いてきただけ」
「え、それだけですか…!?」
「うん、それ以上に理由なんて要らないよね?」
先輩は軽い言い方をしているが、先輩はとんでもないことを言っている。
「本当にどうして…確かに長い間お世話をしてもらったのはわかりますけど、それでもただのバイトの後輩のためだけにそこまでできるんですか!」
「…ん〜、私がどれだけ言っても今の新くんは理解してくれそうにないから、その説明はしなくていいよ!行動で示すから!」
「行動でって…」
「大丈夫!気にしないで!」
天真爛漫っていうのはこういうことを言うんだろうか。
でもこの選択をしたのは先輩だし、その先輩が大丈夫って言うんならそれでいいだろう、それに何より。
「…なら、改めてよろしくお願いします、先輩」
俺も先輩とまた働けるって言うのは、シンプルに嬉しい。
「うん、よろしく!新くん!」
俺は多分、今純粋に喜んで良いのかどうかという疑問なんて他所にして、笑ってしまっているだろう。
これからも先輩に色々と教えてもらえることになった。
「もう新くんは私から離れたらダメってことも、きっちりと教えてあげないとね、長い期間でじっくりと…ね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます