第五章 制多伽童子 (せいたかどうじ)
第43話 鎌倉の軍勢、出陣すること
第三部 救 済 編
第五章
一
翌、十九日。
いよいよ頼朝率いる鎌倉本軍一千騎が街道を北上し、奥州に向けて進撃を開始した。
しかして、身をよろう大軍の歩みは遅い。
北関東の御家人たちと順次合流しながら、坂東と奥州との境である白河関に達するまでに十日を要し、陸奥国内の国見駅に辿りついたのは
この間、大きな戦闘が行われなかったのは、奥州の軍勢が国見駅の北、
――雷のひどい日であった。
そんな
間近に迫れば、それは息をのむほどに巨大な防塁であることがわかった。
手前には水堀が二重に
大蛇の全長は延々七里の距離にわたり、一望できぬほどに長大である。
重くたちこめる雲海の下、鎌倉軍の行く手を、難攻不落の長城が塞いでいた。
夜に入るや、鎌倉軍は人足を使い、
敵陣から矢石が雨と降りそそぐなか、人足たちは死と隣あわせの危険な作業をつづけた。
ついに戦端が開かれたのは、翌早朝のことである。
鎌倉軍は猛将たちが連携し、代わる代わるに押し攻めた。
乱れ舞う剣林と、矢の雨の下を、堀を渡り、防塁に取りつき、敵味方も分別ならぬ死体の山を踏みにじりながら、土塁をよじり越えた鎌倉軍は、ついに阿津賀志山へと進撃した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます