第75話 仲良し家族

「おかえりおにいー」

「ただいま」

「おにい今日もちょっと遅い…」

「ちょっと常連さんがカクカクシカジカあってな」

「おかえり、多分その常連さんが飲みすぎて介抱でもしてたんでしょ」

「そんな感じだ」


飲みすぎどころか一滴も酒飲んでないけどな。


「なんで大人はお酒飲むの? 不味いんじゃないの?」

「お姉ちゃんもお酒飲んだことあるけど、たしかにあんまり美味しいものじゃないね。でも、友達と飲んだりしたら楽しいよ。歩美も大人になれば分かるかも?」

「でも気持ち悪くなったり、頭痛くなるんでしょ? ジュースじゃダメなの?」

「酒は嫌なこと忘れられるらしいぞ」

「ふーん。つまり私はおにいとおねえがいるならお酒飲まなくていいってことね」

「うんうん、お姉ちゃんも歩美ときょーがいるからほとんど飲まないよ」

「姉ちゃんはどうか飲まないでくれ」


酒を飲むと大変なことになることは嫌という程知らされた。まだ目の前で吐いてる人を見たことないのが救いだ。


「家族の前では飲まないから安心して。じゃあ私そろそろ部屋に戻るからきょーがもお風呂とご飯食べたら早く寝なよ。一応病み上がりなんだから」

「おう、そうする」

「私も今週までの宿題あるから戻る。また朝起こしに行く」

「おっけー。じゃあ二人ともおやすみ」


いつも通り風呂に入り飯を食って部屋に戻った。結局やっていなかった課題をやっているとスマホから通知音がなった。

楓からのメッセージだ。


『明日、一緒に学校行く?』


いつも一緒なのに急にどうした? …と、なるところだがこれは多分今日の朝の惨状を見て察した楓からのメッセージだと思われる。

変な噂を広げたくないのか、それとも俺に彼女がいると思い込み気を使っているのか…

とりあえず、楓には期末テストの勉強を教えてもらいたいし、夏休みに変な距離感になって全く遊ばないとかなっても嫌だ。こういう細かいところから関わりが少なくなって関係に亀裂が入る。

つまり! 俺の取るべき行動は…


『当たり前だろ』

『周りから見てもいつも一緒に登校してたのを急にやめてる方が違和感だと思うし、楓いなくなったら俺の朝の楽しみが消えてぼっちになるだろうが』


もちろん変わらず一緒に行こうである。


『りょーかい』

『病み上がりなんだから早く寝なよー』

『課題やったら寝る』

『こんな時間から?家帰ってすぐやれっつーの』

『今日バイトでさっき帰ってきた』

『忘れたって言って明日やれば?』

『その言い訳今日使った』

『バカ?』

『バカだったら課題やらないだろ』

『とにかく早く終わらせて早く寝なよ』

『楓も俺なんかにメッセージ送ってないで早く寝ろよー。あと期末終わって夏休み入ったらまた遊ぼうな』

『また誘って。私も誘うから。宿題頑張ってね』

『へーい』


さて課題に戻りますか…



………



「おにい、起きてー。漫画みたいに布団に潜り込んで上に乗っちゃうやつやっちゃうよ?」

「…おはよー」

「大丈夫? いつもより眠そう」

「いつもより遅い時間まで勉強してたからな」

「もうすぐテストだもんね。でも無理しちゃダメだよ?」

「夜はちゃんと寝るから大丈夫だ。歩美も無理するなよ」

「じゃあ(?)、私が良い点取ったらおにいに褒めて貰う。あと夏休み遊びに行く」

「どんな点とっても褒めし、夏休み遊ぶぞ?」

「いや、ちゃんと良い点とって褒めて貰う。おねえと3人で花火見に行く」


いやぁ、未来の彼女さん申し訳ない(慢心)。俺の夏祭りの予定は決まってしまった(シスコン)。


「あっ、でもおにいに彼女が…」

「いや、彼女が出来たとしても歩美と行く。家族との時間も大切だからな」

「楓ちゃんも誘う?」

「あいつがいいって言ったらな」


楓のことだし、俺以外の友達と行く可能性が高いが一応誘ってみよう。テスト勉強のお礼になんか奢るとか言ったら来てくれる可能性あがるか?


「きょーが起きたー?」

「あっ、おねえ。もう行く?」

「うん。弁当作ったから持ってっていいよ」

「ありがとー。あと姉ちゃん花火の日暇?」

「もちろん。お姉ちゃんはかわいい弟といもうとと一緒に行こうと思ってたからね」


自分で言うのもなんだが、俺ら仲良しだな。


「丁度一緒に行こうって歩美と話してた」

「おねえと浴衣で花火みたい♪」

「歩美の浴衣姿が可愛すぎてナンパされる可能性が!?」

「安心しろ(イケヴォ)。兄ちゃんが守る」

「私はおねえの彼氏のフリして、おにいの彼女のフリする(?)」

「歩美はどう見ても女の子だからお姉ちゃんが男装して歩美が彼女の方がいいんじゃない?」

「普通に家族で良くね?」


いつも通りの朝の支度を済ませ家を出た。

和泉さんと挨拶を済ませ、いつもの場所に行くと楓が待っていた。


「よっ、楓」

「…あっ、おはよ」

「あと、多分お前昨日の惨状を見て気を使おうとしただろ。あれ全部高校生特有の男女が一緒にいるだけだ色々言ってる奴だから」

「…あっそ」

「あれくらい夏休みでみんな忘れるだろ」

「そうだといいけどね」


それか誰かと本当に付き合ってたりしてな。


「あの中の誰があんたのこと好きなんだろうね。みんな既にきょーがの彼女扱いされてそうだけど」


楓とは幼なじみって知らないやつもいるせいで勘違いしてる奴は多そうだ。


「好きなやつがいてくれたら嬉しいけどな」

「…嬉しいんだ。なんかうざ」

「おい、俺は男子高校生だぞ(?)」

「あんたから、俺の事好き? って聞けば?」

「そんな事出来るわけないだろ」

「少なくとも私の目から見ればあんたそこそこイケメンなんだから自信持ちなよ」


そんなことを言われた所で心の中で調子に乗っても自信を持てないのが俺である。


「それ言われたことあるけど、ただのお世辞だろ?」


七原さんのはガチっぽいけどな。


「…その感じだと私以外の女に言われたのね。あんたって奥手なのか鈍いのか知らないけど面倒臭いやつね」


ってことは俺をイケメンと言うやつは俺に好意がある。つまりそこそこイケメンと言った楓は俺の事をそこそこ好きなのでは?


「でもイケメンとか言われてもその面倒な性格じゃ無理か」


すみません…自惚れました。楓は俺の事をよく知ってる。そのよく知ってるやつが面倒な性格とか言ってるわけだ。面倒な男という評価を貰ってる時点俺の事は対象外か。面倒な男が好きなやつは少数派だろうし…


「面食いなら捕まってくれるってことか」

「そんなやつと付き合うなっつーの。面食いなんてろくな奴いないんだから(偏見)」

「でも俺の内面じゃ勝負出来ん」

「どっかにいるでしょ。ちゃんとあんたを見てるやつ」


楓はそう言いながら煽るように俺の頬をついた。


「家族は見てくれてるぞ。特に姉妹が(シスコン)」

「…はぁ。バカね」

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俺には義妹も幼なじみも色んな所で繋がったたくさんの女友達もいる…はずなのに 茄子ぽん酢 @ponzuenergy

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