末
末
いませ我が
陽の
「奇跡って、起きるときには起きるものなんだなぁ」
柊哉と楓真を、しげしげと見て、蓮太は感嘆の息をつく。今のふたりの姿を見て、九星の氏族だと気付く者はいないだろう。肌の色の白さこそあれ、月の光を集めたようだった銀の髪は、
「
蓮太の言葉に、柊哉の瞳が揺れる。蓮太の想いと、
そんな柊哉を見て、蓮太は言葉を重ねる。
「大罪を犯した天蓬家の兄君は、弟君に裁かれて死んだ。ここにいるのは、ただの柊哉と楓真だ」
裁くべきものは、もう存在しない。
「それでも、お前が償いをしないと気が済まないって思うなら、生きることで償うことだな」
そう言って、蓮太は手綱を引く。初夏の風が吹き抜け、若葉の匂いを運んでいく。木漏れ日が揺れる。穏やかに、優しく、温かな光が降り注ぐ。
「蓮太……本当に――」
柊哉の声が、木々のざわめきに溶ける。
ひらりと馬に飛び乗って、蓮太は笑った。
「詫びより、礼より、お前が今、生きていることのほうが、俺には大事だ」
「生きろよ、お前ら。その黒髪が、白髪になるまで」
大きく手を振って、蓮太は笑った。
雲ひとつない蒼天に
+
晴れ渡る夜空に、天の川が広がっている。星明かりに照らされて、七夕飾りが、きらきらと
「兄上」
笹の下、楓真が振り返る。
「願いをかけるというのは、未来を結ぶことなのですね」
願いが叶うまで生きよう、と。生きていよう、と。
生きてほしい、と。
「だから、沢山、願い事をしましょう。来年も、再来年も、その先も、私は願い事をします。……兄上の
柊哉を真直ぐに見つめて、楓真は微笑んだ。夜空の瞳が
「楓真」
柊哉も微笑む。楓真の瞳と、同じ瞳で。
「私は
「欲張りで良いです。私も願いますから。全部、叶うまで、生きれば良いです」
一緒に願って、一緒に叶えて、生きれば良いです。
七夕は、どんな願いも、
「行きましょう、兄上」
楓真が手を差し伸べる。柊哉は
固く繋いで、歩いていく。短冊の先へ。願いの向こうへ。
――生きましょう、兄上。
願って。
願い続けて。
ふたりで、共に。
七夕は、星合ともいう。
幾千の夜を越えても、心の離れることのない、ふたつの星。
互いが、互いの、たったひとつの、願い星。
願い合って、叶え合って、生きていく。
寄り添う星の、輝き合うように。
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