伍-4
晴れ渡る青空の下、葉桜が
蓮太と共に北へ――次の
山中の野宿。蓮太が眠ったのを確認し、楓真は、そっと、近くの川辺へ出る。
月は雲に隠れて見えなかった。
風はなく、川のせせらぎだけが、夜の
――焼き払え、
瞬間、巨大な火柱が、円を描くように、楓真の周りに上がった。鮮やかな
「……追いついてみせる……届いてみせる……」
楓真の炎が、夜闇に沈む
「あいつの背中を……振り向かせて……そして……」
炎の先を、楓真は見つめた。じりじりと
少しずつ、
雲が切れ、月の光が射す。足もとの
兄と同じ銀の髪。兄と同じ金の瞳。兄に似た顔。兄と半分、同じ、血を分けた体。
在りし日、兄に並び立てるほどに、力をつけたかった。兄を守るために。
それが今、兄に
勝てなければ、裁けない。
敵わなければ、殺せない。
兄を殺せば、怒りの炎は消えるだろうか。
兄を裁けば、憎しみの炎は絶えるだろうか。
兄を殺すという罪。兄を永遠に失うという罰。その上で楓真は兄を裁くと誓った。
兄を殺し、裁いたなら、悲しみだけを、抱えていられる。遠い夜空の星のように、きらきらと瞬く、幼い記憶を、
今、楓真が望むのは、ただひとつ。終わらせることだけだ。楓真の願いは、もう、過去にしかないから。あの七夕の前夜に、全て絶えてしまったから。
楓真の
やがて、次の
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