第291話 チェンパータにて

「…見えた!あそこがチェンパータの外門です!」

「良かったわ……無事に戻って来れたのね。ロシェル、もうすぐお家に着くわよ!」

「…………あ!ほんとだ!しってるたてものがある!シローおにいちゃん!こんどは、ぼくのおへやにみんなであそびにきて!」


 スティンムロシェルパパさんに肩車をされているロシェルが、元気に街を見て言って来た。


「そうだな……でも、お父さんとお母さんに聞いてみたか?俺達もギルドに顔を出さなきゃいけないし、ロシェルも少し休んでからの方が良いと思うぞ?」

「そうですね………皆さん、良かったらギルドへの報告後、昼食をご一緒にいかがですか?ロシェル、皆さんには、お昼ご飯の後にお家に来て貰おう?」

「……ごはんのあとで?おにいちゃんたちもゴローさんもチビもみんなできてくれる?」

「ありがとうございます。では、後ほどお邪魔させて頂きます。ロシェル、俺達はギルドでもう一仕事してから遊びに行くよ。」

「ほんと?!やったーー!ぼくのだいすきな本をゴローさんとチビによんであげるの!」


 リディアロシェルママさんもその提案に頷いたのを見て、ロレンドさんがそう返事をしてくれた。


 待ち合わせの場所を決めると、皆で外門のチェックを済ませ、いったん別れて俺達はギルドを目指す。


 まだ、朝の早い時間だったのもあって外門は人も疎らで、すぐに通る事が出来た。街の中に入ると店はまだ開店準備中だった。


 昨夜、頑張って進んでおいた甲斐があったな。


 トラキオさんに聞いたが、チェンパータはこの国でも有数の穀類の生産地で、ここまで来たからには小麦粉の仕入れもして帰りたいと、トラキオさんが燃えていた。


 それは、是非俺も便乗させて貰わねば!こっちでは、強力粉しかまだ見てないんで、薄力粉を探したい!それと、あるなら蕎麦粉だ。


 うどん作りに慣れて来たから、次は蕎麦打ちチャレンジして、ざる蕎麦食いたいんだよ。


 でも、まだ蕎麦つゆの材料が皆無……。


 昆布出汁は諦めて、川魚で1番それっぽく出来そうなノボリウオで作った、なんちゃって鮭節を使ってみようとは思ってる。


 ただ以前、鮭節を作った時に悟郎さんが味見をしたいって言うんで渡したら、味見で済まず、プチ砂漠の巣穴に1本丸ごと持って行かれ、挙げ句に暫く出て来なかった。


 ご飯だよ!って、言っても出て来なかった……。


 クンコウギョアユの燻製よりも大きく、硬く噛み応えがあり、より味が凝縮されて美味しかったと高評価を頂けたのは嬉しい。


 だが、ご飯も忘れて巣穴に籠もられた時、俺は悟郎さんの巣穴の前で声を掛けながら、引き籠りの子供にご飯を持って行ったのに、ジャンクフードばかり食って、せっかく作ったご飯を食べて貰えなかった……そんな親になった様な、切ない気分を少し味わった。


 それ以後、鮭節は悟郎さんの目に触れない様にしている。代わりに作った『鮭とば』を渡す様にした。

 あれなら、皮付きで噛み応えがあるけど、スティックサイズで食い切れるからな。


 朝日の差す道を進むと、お馴染みのギルドのマークが見えて来た。そのまま中に入れば、まあまあの混み合いで、街の規模的にも辺境を思い出す。


「依頼達成の報告をしてくる。少し待っててくれ」

「…………任せた」

「はい、お願いします」


 ロレンドさんに報告と精算を任せ、依頼の掲示板を見ると『カロートスの駆除(100匹〜)』、『コゾクウムシの駆除(100匹〜)』、『クダツの討伐と納品』、『モワノーの討伐と納品』等…………。


 俺の感が言っている……ここの依頼は受けちゃいけない!


 特に最初の2つは、危険な匂いしかしない。絶対に避けるべき依頼だな。


 もう、虫の駆除は、キノコダンジョンで嫌になる程やったからな。


「…………シロー、依頼に出ている『クダツ』と『モワノー』なんだが、この地域に生息している鳥の魔物なんだ。特に『クダツ』の方は肉の味が濃くてな、たぶんゴローも好きだと思う。見つけやすい魔物だから、出来れば何羽か討伐したい。」

「そうなんですね!悟郎さん聞いた?美味しい鳥の魔物なんだって!鳥なんて、ホロトリ以外は、まだあまり食べる機会が無かったな……どんな味だろう…?」

「たぶん、昼飯のメニューにもあると思うぞ?そこで食ってみるといい。」

「あ!ロレンドさん、もう終わったんですか?」


 戻って来たロレンドさんが話に入ってそう言った。鳥か………どんな鳥なんだろう?

 見つけやすいって事は、きっと個体数も多いだろうから、発見次第討伐だな!






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休出で休みが丸ごと潰れてしまい、ストック切れの為、しばらくは短めの投稿をします m(_ _)m


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