第292話 小麦畑で捕まえて①
「じゃあ、丁度良い空き時間だから討伐に行くか!」
「…………そうだな。店も開くのはこれからだし、約束の昼までは討伐をして、昼飯後にロシェルの所に少しお邪魔させてもらおう。買い物はそれからでも十分だ」
「なら、その予定で行こう。シロー、歩きながらで悪いが、ランティエンスであった事を教えてくれ」
「はい。本当に色々あって、あのクソジジイが何をしたくて動いてるのか……2人の意見も聞きたかったんです」
俺達は、そのまま依頼は受けずにギルドを出て、狩りをする為、街の外にある小麦畑に向かった。
その道すがら、ランティエンスで見聞きした事を2人にも説明する。
ロレンドさんもトラキオさんも、俺の話を聞いて同様に困惑した顔をし、返答に困った感じだ。
「…………正直、俺達の手に余る状況だって言うのが分かった。ただ護衛をやられた為の報復では無い事もな。」
「そうだな………。少なくとも、俺たちがランティエンスに来るずっと前から、様々な事が進んでいたんだろう。ただ、そこに招かれざる…と言うか、予期せぬ出来事が起きた。シローの介入と抵抗は、ジケイナの予定や準備を阻害する結果になっているはずだ。」
「…………だろうな。しかも、差し向けた刺客は
「う〜〜ん…証人はどこまで有効でしょうかね?俺が脅して衛兵隊の所へ行かせたヤツ等では、ジケイナに迫るのは難しく感じます。その後に王都から連れて来られたヤツ等は、多少効果があるでしょうけど…。」
ランティエンス方面とは別の外門から出た先は、長閑な小麦畑に覆われている。一部は既に刈り取られ、残りの作業をする人影が所々に見えた。
黄金色って、大袈裟な例えをしやがってって、ずっと思ってたけど……これなら、確かにゴールドを名乗ってもオッケーだわ。
それに、ここでこそ、悟郎さんを肩に乗せて、
「ニャォゥ(いた)!!」
「待って!!悟郎さん、まだ討伐しないで!!!」
ここには不穏な討伐対象も混じってるんだ!確認してからにしてくれよぉ!!
「………カロートスだな。コイツは畑の天敵だから、たくさん倒すといいぞゴロー。」
「ニャッ(わかった)!!」
「ええっ?!それ……イナゴじゃん!マジキモい!!目が……目がデカ過ぎっ!どこ見てんだよこのクソ虫が!!」
虫を得た悟郎さんは、肩から降りて畑に入ると、小麦で姿が見えなくなった……。
だが、狩る度に『ニャゥフ(狩った)!』と、声が聞こえて来て、どんどん討伐しているのが分かる…。
「シロー、カロートスの討伐証明は、触角2本だぞ。残りは畑の肥料に加工されるから、まとめて街の倉庫に持って行こう!」
「……はい。」
おかしいな………確か、俺達は滋味深い味わいの鳥を狩りに来たはずじゃ………。
乗りに乗った悟郎さんの声が、小麦畑から絶え間なく聞こえる……。
確か100匹〜って、書いてあった…よな?あの常設依頼………この調子なら行けそうだ。
それに、あんなキモイナゴなんか、他では売却も出来ないだろうから、絶対にここのギルドで精算をするぞ!!
「キュウッ(いくぞ)!!」
「チビまで?!おい、マジ巫山戯んな!討伐するなら鳥にしろ!!」
「……キュッ(狩った)!」
「…………え…??これは……雀?デカくね?…
チビが放った『風薙』は、上空を飛んでいたアヒルサイズの雀に当り、そのまま落下して来た。羽がヒヨコみたいに黄色っぽく、小麦畑に溶け込みそうな色をしている。
「お!チビはモワノーを狩ったか!そいつは淡白だけど美味い鳥の魔物だぞ!」
「………実はそいつも害獣なんだ。雑食で、カロートスを狙って畑に来るんだか、小麦も好きで一緒に食うんだよ。だから、チビもどんどん倒していいぞ!それにモワノーの肉は、ゴローが食うだろうからな。」
「キュキュ(わかった)!」
そうか……確かに雀って穀類を食うから、農家さんにとっては天敵か…。
チビの経験値にもなるし、ここは任せよう。麦を切るといけないんで、地上は悟郎さん、上空はチビに討伐を任せて、俺はせっせと落穂拾いの如く、魔物を拾っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます