第288話 抵抗勢力?

 ロシェル達の住む『チェンパータ』は、キノコダンジョンを越えた先にあるらしい。


 俺が合流するまでは、ロシェルは親父さんに負ぶさってもらい、歩きで進んでいる。


 なので、進みは遅い……と、言う事は狙われ易い。


 ロレンドさん達は態とゆっくり進んでおり、街からあまり離れていない場所で見付けられた。


 そして、少し距離を置いて後を追うヤツ等が18人いた。【ジケイナ私兵】と【ジケイナ護衛】の混合だったんで、有無を言わさずゴミムシの餌に。


 王都の大商会って、『私兵』まで揃えているもんなのか?これが普通?!


「遅くなりました!」

「シロー!大丈夫だったか?無事出れたんだな…!」

「それについては、後で説明しますね。ロシェルもお待たせ!今、悟郎さんの家に招待するよ!」

「やったー!!ぼくまってたんだ!」


 背負われているロシェルはともかく、母親の方が砂漠の暑さで疲れが見えていた。


 ハウスを出して、許可を出し戸惑う両親を促して、中に入ってもらう。


「……暑くないわ!」

「本当だ!それに植物がたくさん……」

「おとうさん、おろして!ぼく、ゴローさんにおうちみせてもらうの!」


 悟郎さんがロシェルを座って待ってる。

 ロシェルが父親の背から降りたのを見て、そのままプチ砂漠にロシェルを先導して案内してくれた。


 両親2人には家に入って貰い、部屋と設備の説明をしてからリビングに通す。


「す…凄い家ですね………」

「……ロシェル!大丈夫?」

「あ!おかあさ〜ん!ゴローさんのおうちあったの!おすなのなかにすんでるんだって!」


 リビングの窓からロシェルの様子を確認し、母親も安心して、こちらに戻って来た。


「ここまでして頂いて、本当にありがとうございます!ロシェルもとても楽しそうで……皆さんのお陰です!」

「良いんですよ。それより、もう少し街から距離を取りたいんで、この後少し失礼します。テーブルの物は自由に召し上がって下さい。疲れていたら、いつでも部屋で休んで下さいね。」


 そう両親に話して、ロレンドさん達にバトンタッチし、庭に出てピヨ達を呼んだ。


「イア〜、オルガ〜、マシューちょっと来てくれ!」

「「「ピヨ(わかった)!!」」」


 3羽の飛び込みを受け止めて、変わりない事を確認してから、ロシェルを紹介する。


「ロシェル〜!ちょっといいか!」

「はーーーい!」


 悟郎さんの側で遊んでいたロシェルがこっちを向くと、すぐにピヨ達に気付き、駆け寄って来た。


「とりさんだ!」

「そう、鳥さんだ。この子等も俺の従魔なんだけど、暑い場所が苦手だから、普段はこの家にいるんだ。仲良くしてくれな!こっちから、イアとオルガとマシューって言うんだ。皆もロシェルと仲良くな!」

「「「ピッピヨ(大丈夫)!」」」

「わぁ〜、かわいい!ぼくはロシェルだよ!」


 ロシェルにピヨ達を紹介し、互いに認識してもらいつつ、慣れて遊んでくれたら嬉しい。


 あとはロレンドさんとトラキオさんには、そのままハウスに残って貰い、キノコダンジョンに着いたら出て来てもらう事にした。


 そして念の為、隠密を掛けて外に出ると、新たなジケイナの私兵&護衛が周りをウロウロしている。


 どんだけ俺達相手に人員を出してんだよ?!


「何だこれは!!どうなってる?!」

「駄目です!火も点けられません!これ、ダンジョン品ですよ!」


 付け火用の燃えた木材を手に騒いでるし。これ、放火の現行犯だろ。


 そいつ等を無視してハウスを仕舞い、よく見てみると【ジケイナ私兵(強制)】と、出ている人物が数名、遠巻きにこちらを見ていた。


 とりあえずは、付け火現行犯共には消えてもらおう。ヤツ等を魔法で両断し、隠密を解いて残った私兵の前に姿を見せた。


「……よう。ジケイナの私兵の皆さん。何人死ねば気が済むんだ?」

「!!!」

「…まあ、何人寄越そうと、同じ末路を進むことになるけどな。…………所で、アンタ等はジケイナから強制されてやってるみたいだけど……その理由を聞いてもいいか?出来れば答えてくれると助かるね」

「!!…何で知って……」

「……便利な魔法を使えるからだよ」

「………………………鑑定か看破か…。……そうだ、俺達は家族を……人質に取られて強制されている。俺達は元は王都の衛兵や冒険者だった。アイツが何をするかは知らないが、ランティエンスで言われた仕事をしろと、ここまで連れて来られた」


 ……強制ってそう言う事か。でも、あのクソジジイが、使い捨ての私兵の家族を生かしているとは思えないんだけどな…。


「……悪いんだけど…ジケイナのクソジジイがアンタ等の家族を生かしているとは思えないよ。」

「分かっている!!そんな事……お前に言われるまでも無い!だけど……だから、アイツの尻尾を少しでも掴むために……例え汚名を背負わされ、捕まったとしても、ジケイナは絶対に引き摺り下ろす!!」


 うーーーん……どうすっかな…。ジケイナの敵は、俺からすると味方なんだよね。


「そうか。所で、これからどうする予定だ?アンタ等の監視は……俺が殺したかな?」

「ああ……。だから、何とか街に戻って他の仲間と合流したい。……お前が見逃してくれるならな。」

「だけど…ランティエンスの衛兵の一部も、既にクソジジイに取り込まれているしな……まあ、幸い街はまだ見える場所……。よし!ロシェル達の安全は確保出来たから、アンタ等を街の中までは連れて行ってやるよ。」

「本当か?!」

「ああ。その代わり、頑張ってジケイナのクソジジイを引き摺り下ろす準備をしてくれよ?」

「もちろんだ!!」


 そうと決まれば、さっさと行こう。残った6名に健脚の魔法を掛け、本人達の最速で移動させる。


 ……衛兵と冒険者だったせいか、確かに足取り良く進みも早い。


 そのまま、俺が外壁を越えようとした場所の近く迄行き、全員に隠密を掛け、外壁の所まで到着した。


「ここから中に入る。先ずは1人、一緒来てもらえるか?」

「俺が行こう。」

「じゃあ、俺の肩にしっかり掴まって。絶対に声を上げるなよ?」

「分かった。」


 率先して話をしていたヤツを連れ、跳躍をし、街の外壁内に降りる。


「(はい、到着。このまま待っててくれ。)」

「(……ああ。分かった…。)」


 他のヤツも同じ様に街中に連れて飛び、最後の1人を掴んで飛ぶと、その途中でソイツは刃物を出して俺に突き立てて来た。


「?!」

「間者さん、ご苦労様でした!後は、アイツ等の邪魔になるから、ここでさようなら〜」


 ソイツから刃物を奪い、胸を一突きして、空気砲で砂漠の方へ吹き飛ばした。


「(!そんな!!まさかアイツ…)」

「(……さっきの間者が持っていた刃物だ。この印はアンタ等も知ってんじゃねぇの?)」

「(………ジケイナの家紋!!)」

「(疑ったらキリが無いとは思うが、裏切りとさっきの様な間者には注意しろよ。あのクソジジイは、アンタ等の行動も想定しているだろうからな)」

「(分かった……。本当にありがとう…………お前達の護衛していたあの子供……家族を無事送り届けてやってくれ)」

「(……もちろんだ。それと、お前達には隠密と護身の魔法を掛けておいた。効果が切れる前に仲間と合流しろよ)」

「(ありがとう!)」


 そこで、王都から連れて来られたヤツ等とは別れた。


 王都から来た者の方が、ジケイナの事は良く知ってるはずだ。その容赦の無さや苛烈さも。


 俺も、護衛を1人使えなくしただけで、こんな目に遭ってる。その上、ロシェルの誘拐や悟郎さんへの詛呪といい、矢鱈と狙われるのはなんでだよ?!


「……頭の沸いた老害クソジジイの考える事なんか、分かる訳がない。ただ、関係ないロシェルや悟郎さんにした事は絶対に許さねぇ。何を企んでいるにしても、全部潰してやる…。何を潰すのが1番効果的かな……?」


 ジケイナが大切にしてる物は何だろうな…?


 とりあえず、面子は絶対に潰す。あとは、何が良いかな〜!オラ、ワクワクすっぞ!


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